【芸能】ドラマ“釣りバカ”注目3要素

 いよいよ23日からスタートするテレビ東京系連続ドラマ「釣りバカ日誌 新入社員 浜崎伝助」(金曜後8・00、初回は2時間)。原作漫画、映画シリーズともに大ヒットの“釣りバカ”がドラマになって帰ってくる。放送に先駆けて行われた22日の初回先行上映と制作発表、またこれまでに取材したキャストたちのインタビューを基に見どころを3つのポイントに分けて紹介する。

  ◇  ◇

 (1)融合

 全22作が公開された映画版は、建設会社に勤める万年ヒラの中年“釣りバカ”サラリーマンのハマちゃんと、ひょんなことから釣り仲間になる社長のスーさんによる軽妙な掛け合いで人気を博した。ハマちゃん役の西田敏行とスーさん役の故三國連太郎さんは映画史に残る名コンビで、それゆえに“後を継ぐ”キャストへの重圧は想像に難くない。

 だが、ドラマで描かれるのはハマちゃんの新入社員時代。舞台も2015年で、いわば映画のパラレルワールドといえる。ハマちゃん役に濱田岳が抜てきされただけでなく、西田がスーさんに“昇進”したことでも話題。西田は自身の当たり役の正当後継者となり、緊張する濱田に「新しい“釣りバカ”を作っていきましょう」と声をかけたという。

 三國さんのスーさんを間近で見ていた西田は「三國さんは経営者の風格を割と大事にして、ファッショナブルな風情を残していた。僕はその辺、ちょっと庶民的で『土建屋だぞ!!』とたたき上げの社長の空気を出そうと思ってます」と換骨奪胎。ハマちゃんの違いについても西田は、こう説明してくれた。

 「僕の場合(映画)は、ちょっとすれたハマちゃん。中年サラリーマンという設定的に世慣れしているというか、世の中を斜に見てる。年の功もあったと思うんですけどね。

 ドラマは純粋でピュア。本当に釣りが好きでどーしようもない、1人の若き青年を濱田くんが演じてくれている。日本で唯一にして希有な俳優です。

 そういう意味では、ドラマは“正義のハマちゃん”で、僕がやったハマちゃんは“ちょい悪ハマちゃん”かもしれませんね」

 実際、第1話の濱田版ハマちゃんは、まっすぐで裏表がなく、でも、どこか抜けていて憎めない。ズケズケと知らない人の会話に顔を突っ込んだり、釣りのことになると上司相手でも真剣に怒るなど“らしさ”を見せつつも、新入社員ゆえのフレッシュさを感じさせるのが心地よかった。まさにハマり役といった様相で、その“ちょっとズレた”純粋さがユーモアを生んだり、周囲の心を浄化していく様は、他でもない「釣りバカイズム」だろう。

 濱田は撮影の進んだ現在でも映画版を見返し、原作コミックを読み返すという。「僕にとっては教科書が2つあるような感じ」と語る。「西田さんが演じた、ああいう横柄な態度の毒気を一切抜いて、人に嫌われないキャラの見本が映画にはあるし、ハートの部分は漫画に載っている」と、新しいものを作ろうとしながらも“先輩ハマちゃん”たちへのリスペクトが常にあるからこそ、本質的な釣りバカらしさが映像から匂い立つのだと思う。

 映画で谷啓さんが演じた佐々木課長役の吹越満も「僕なんかが、なぞろうとしても無理」と、一見怖そうでいながら部下思いな面も垣間見える新たなキャラ像を提示している。偉大な映画シリーズへの尊敬を胸に、新たなものを作りだそうとする新旧の融合が魅力的に映った。

 (2)ロマンス

 映画では、すでに結婚していたハマちゃんの妻、みち子さんだが、ドラマでは出会いから描かれる。映画も担当していた朝原雄三監督は「恋模様が織り込まれるのが魅力。どうなっていくのか楽しみにしていただけたら」と、ドラマならではの見どころに挙げている。

 演じるのは女優の広瀬アリス。美形なビジュアルながら、肝っ玉でハマちゃんを何度も張り倒す豪快なキャラを好演している。なまりの強い秋田の方言も印象的。ハマちゃんに振り回され、時には怒ってビンタし…とケンカを繰り返しながら、少しずつ2人の心が近づいていく距離感は、まさに食卓で家族全員が楽しめる王道だろう。3話まで撮影を終えていた濱田が「恋が芽生えそうな感じはまるでないです」と笑っていたように、展開は牛歩ながら誰もが応援したくなる恋愛模様はドラマの“第2の矢”だ。

 映画のように結婚し、息子の鯉太郎くんが誕生するまで描かれるかは不明だが、映画版を知っている人だからこそ楽しめる前日譚となっている。

 (3)グルメ

 ドラマ中には、ハマちゃんたちが釣った魚の調理法コーナーが構成されている。料理上手なみち子さんが魚をさばく際、料理番組のように画面が切り替わり、第1話では「アジの磯辺揚げ」の作り方を教えてくれた。

 レシピはすべてオリジナルで、番組の料理コーディネーターが考案しているという。制作サイドは「できるだけ料理しやすいものを、と考えています」と説明し、大手レシピサイト「クックパッド」にもレシピを掲載。番組だけでなく、魚そのものを好きになってもらいたいとの思いが伝わってくる。

 作りたての魚料理を食べ、瓶ビールを飲むハマちゃんとスーさんを見ていると、こちらもクイっと一杯いきたくなることうけあい。深夜のめしものドラマによる“深夜テロ”さながらのグルメ要素も見逃せない。

  ◇  ◇

 “新しさ”と“お約束”を融合した新ストーリーに、ドラマ版ならではの要素。「金曜の夜に家族4世代で楽しめるドラマを」と“金8枠”が誕生してから3年で初のコメディーを編成したテレビ東京の勝負作が、視聴率的にもどのような“大物”を釣り上げるのか注目だ。

(デイリースポーツ 古宮正崇)

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