【芸能】「バクマン。」配役の真意とは

 人気漫画を原作にした映画「バクマン。」が10月3日に公開される。昨年5月に映画化の情報が解禁されると、ネットを中心に騒がれたのが、W主演の佐藤健(26)と神木隆之介(22)が演じる漫画家コンビの配役が逆ではないかという“論争”だった。ところが一転、今年に入って映画の予告編が流されると「逆じゃなかったかも」の声が起きている。漫画の実写化が主流となりつつある今、キャスティングにおいて大事なものは何なのか-。同作の川村元気プロデューサーに極意を聞いた。

 映画、ドラマ化もされた「デスノート」などの原作・大場つぐみ氏、作画・小畑健氏のタッグで「週刊少年ジャンプ」に連載された原作は、作画の真城最高(サイコー)と原作の高木秋人(シュージン)が売れっ子漫画家を目指して奮闘するヒット作。“逆論争”の最大のポイントは「見た目」だった。

 映画では佐藤がサイコー、神木がシュージンを演じている。配役は大根仁監督(46)の提案。川村氏は「始めは僕も逆だと思った」と明かす。原作のビジュアルは、サイコーが丸顔かつ童顔で、シュージンがクールな面長な上に背が高い。実際、ネット上では2人の配役を入れ替え、髪の色などを加工した画像もあり、確かに逆の方がビジュアル的にしっくりくる。

 「でも」と、川村氏は言う。「大根監督に言われ、確かに見た目は世間の言うように逆だと思うんですけど、本人たちが持っている資質は今のキャスティングの方が合っているな、と」。

 そして、映画界で長らく議論されている“入り口・出口”というワードを使って解説してくれた。映画を鑑賞した人の印象のうち、最初と最後、どちらに重きを置くか、という意味だ。

 「映画のキャスティングって、難しいんですけど、絶えず“入り口”の印象をとるか、それとも“出口”をとるか、という議論があるんです。似てる似てないで言ったら今回は逆ですよね。でも、映画を最後まで見たときにどっちが適役かと言ったら今のキャスティングなんです。僕たちは“そっくりショー”をやりたいわけではないので。そういった意味では、ラストの印象をとった監督が正解だったんだな、と。それは見ていただければ、納得してもらえると思います」

 漫画家を目指すきっかけを作り、サイコーをぐいぐいと引っ張るシュージン。熱意を内に秘め、勝負所で爆発させるサイコー。2人の異なる個性のぶつかり合いが、本作の魅力でもある。

 「情熱を秘め、冷静だけど野心的な佐藤健と、熱血漢で明るく熱心な神木隆之介というキャラは、2人の持っている資質。ケースバイケースで、ビジュアル的に似ているってことが大事な作品もあると思います。例えば、少女漫画の映画化。でも、今回は少年漫画の映画なので、最終的には“魂”が似ている方が大事なんじゃないかと思いました」

 川村氏自身、当初は逆ではないかと思いながら大根監督の案を信じたのには、かつてタッグを組んだ映画「モテキ」での経験があったからだという。「当時、長澤まさみをああいう役で使うっていうのは、普通の人は思いつかないと思うんです」。同作で長澤は、それまでの清純なイメージを一変させ、小悪魔でセクシーな“新キャラ”を開眼させた。川村氏は「そういう役を当てるんだって新鮮だったし、大根監督の演出家ならではの勝算があって、実際すごくよかった。その後のイメージを変えちゃいましたよね」と振り返る。

 「大根さんのキャスティングのセンスを信じているところがあって、(自分が思っていた配役を)ひっくり返したいと言われたとき、大根さんが言うなら勝算があるのかなぁ、と思いました。でも、実際にできあがった映像を見て、(配役が)逆だったら(作品を成立させるのが)難しかったかなと思います」

 川村氏によると、映画館に来場する原作ファンの割合は2~3割という。「大事なのは作品と合っているかどうか。自分が原作ファンの1人なわけで、原作ファンにもいろんな人がいて、いい・悪いって議論は当然あってしかるべきだと思います。でも、原作を読んでいる人の倍以上が映画館にくることが多くて、読んだことのない7~8割の人に『ああ、この原作読んでみたいな』って思ってほしいんです」と明かす。

 「だから、そっくりショーになると危険で『(原作を知らないからこそ)なんで、こんなことになってるんだろう?』ってなっちゃう。そこは1番気をつけないと、と思ってます」

 予告編を見たファンから“逆じゃなかった”との意見が出ていることに、川村氏は「むしろ逆だって論争のまま公開日を迎えたかったんですけど」と苦笑いする。

 「議論が起きるのは注目されている証しなので、うれしかったです。予想できるものに、人ってお金を払わないと思うんです。こんな映画だな、って予想できるなら見にいかなくていいじゃないですか。『一体どうなってるんだろ?でも意外と予告編みると様になってるな』とか、期待を気持ちよく裏切る、という点では、今回のキャスティングは目玉かもしれないですね」

 実際、集英社の「バクマン。」連載時の初代、2代目の編集担当、そして原作者の2人は、最初から映画の配役を支持していたという。逆はありえない、と-。

 川村氏は「うれしかったのが、原作者のおふたりが気に入ってくれたこと。小畑さんは、もう(映画を)7回観てくれてます。お墨付きをいただいたのかな、って気はしてますね」と自信を見せる。さあ、今週末、劇場ではどんな声が上がるのだろう。

(デイリースポーツ 古宮正崇)

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