大瀬良の中継ぎ転向は直球の球速がカギ
広島の大瀬良大地投手が、リリーフに転向することになった。
昨年の新人賞右腕は今季、開幕からローテを守りながら9試合で1勝6敗。緒方孝市監督から「うちにとって前田、黒田に次ぐ存在」と期待されているが、好投しても打線の援護に恵まれなかったり、援護を受けても勝負どころで踏ん張れなかったりと、悔しい登板が続いていた。
6日・楽天戦の試合前に首脳陣から通達され、調整が中継ぎ仕様に変わった。同9日・西武戦から本格的なブルペン待機が始まった。プロ入り初の中継ぎ登板が間近になってきた。大瀬良は「自分は任されたところを全力でやります。どのポジションでもチームに貢献したい」と、覚悟を決めている。
カープは8日の西武戦を終えて25勝33敗で最下位。先発以外では一岡4敗、中崎3敗、ヒース2敗、永川1敗、今村1敗と、リリーフの失敗が目立つ。
今回の配置転換は、苦戦が続く中継ぎ陣の底上げと、勝ち運に見放されている大瀬良の再生を狙ったもの、両面があるといえるだろう。
広島には佐々岡真二、大野豊、津田恒美ら先発、抑え両方で結果を残した先人がいる。一方で沢崎俊和、小林幹英、山内泰幸ら1年目に活躍しながら、短命に終わった投手もいる。
現在の先発2枚看板を形成するのは前田健太と黒田博樹。前田は早期の大リーグ挑戦願望を表明しており、黒田は40歳になった。
ある球団首脳が「大瀬良は先発の柱になってほしい」と話すように、近い将来を見据えた場合、大瀬良が先発の柱に育つのが理想だ。一方で同首脳は「厳しい場面で1イニングを抑える経験は、先発マウンドにも生きてくるだろう」と、配置転換の意義も認めている。
リリーフ適性として、一般的には奪三振率の高さが挙げられる。走者を背負った場面では、三振を奪う価値がより高まってくるからだ。
大瀬良の奪三振率は、昨年の6・91(151回116三振)から今季8・21(60回1/3で55三振)に上昇している。大瀬良が「昨年は緩い変化球が使えなかった。打者有利なカウントでも真っすぐ系を投げるしかなくて、それを狙い打たれた。今年はカウントを悪くしても緩いボールでストライクを取れるのが大きい」と話すように、投球の幅が広がったことが要因の一つになっている。
例えばセ・リーグ守護神の奪三振率を挙げれば、以下の通りになる。
巨人…沢村拓一7・52
DeNA…山崎康晃12・64
阪神…呉昇桓10・93
ヤクルト…バーネット6・33
中日…福谷浩司6・12
広島…中崎翔太9・31
変化球の精度が上がったことで、投球の幅が広がった大瀬良。さらに直球の球速は先発時で140キロ台前半から、150キロ台前半とばらつきがあるが、1イニング限定で投げる際に終始150キロ台をマークするようだと、「僕の持ち味」と話す直球の威力がさらに増すことだろう。
最下位に沈むカープ。そして成績的に“2年目の壁”に直面している大瀬良。今回の配置転換がチームにとっても、右腕にとっても好転するきっかけになることを期待したい。
(デイリースポーツ・山本鋼平)