韓流ブームの再来はあるのか?

 12月8日は韓国のソウルにいた。JATA(一般社団法人 日本旅行業界)が実施した「韓国体験 MEGA FAMツアー」に同行できたからだ。このツアーは1000人を超える日本の旅行業界関係者を韓国に送り込み、今後の集客に弾みをつけ、さらに来年の日韓国交正常化50周年に向けての機運を高めるのが目的だ。

 日韓の政治的な冷え込みの影響で、韓国の旅行業界、特に日本人を対象とした会社は大打撃を受けている。2012年に韓国を訪れた日本人は約351万人だったが、翌13年は274万人まで下落。今年はさらに数字を落とし、約230万人と推定されており、韓国観光公社のイム・ヨンムク日本チーム長が「壊滅状態」というほどだ。

 過去にJATAが1000人規模のツアーを実施したのは、01年にアメリカ同時多発テロ事件が起きた後と、11年に東日本大震災が起きた後だけ。韓国の観光業界は、テロと天災に遭ったような深刻な状況に陥っているようだ。

 韓国の観光業界は芸能界とも深い関わりがある。ここまで来訪客が落ち込んだ裏には、11年ごろまでは“この世の春”を謳歌(おうか)していたK-POPの低迷も影響しているという。

 韓国のエンターテインメント業界はマーケットの小さい自国よりも他国で外貨を稼ぐことを目標としている。極端な言い方をすれば、“国策”ともいうべきもので、その1番のターゲットが日本市場だ。2000年初頭からの戦略は見事に当たり、04年に日本で初放送された「冬のソナタ」をキッカケに韓流(はんりゅう)ブームが起こり、観光業界へも大きなフィードバックがあった。

 戦後、韓国の日本音楽に対する扱いは厳しかった。来年で国交正常化50周年になるが、日本語のCDが発売できるようになったのは04年のことだ。1999年までは日本人歌手が日本語で歌うこともできなかった。そういうハンディがありながらも、日本の芸能界は80年代にチョー・ヨンピル、キム・ヨンジャ、ケイ・ウンスク、チェウニら実力のある韓国人アーティストを発掘していた。ここが日本の芸能界のスゴイところで、どういう政治状況があろうとも“音楽に国境はない”を地で行き、欧米のポップスやジャズ、ロック、ヒップホップにレゲエ…何でも受け入れた。K-POPも例外ではない。

 前出のイムチーム長は「政治的な問題もあって今は低迷しているが、エンターテインメントの力は大きい。政治情勢が回復すれば、日韓相互理解の絆になってくれると思う」という。日韓国交正常化50周年に向けて、俳優や歌手などを使ったツアーも考えているそうだが、いっそのことソウル五輪のメーン会場となった蚕室に日韓のスーパースターを呼んで5万人規模のコンサートを10日間ぐらいぶっ続けでやってみればどうだろう。ストーンズやポールの特別ゲストもOKだ。日本人のファンも多数海を渡ってくると思う。

 偶然かどうか、12月8日は元ビートルズのジョン・レノンの命日だった。1980年に40歳の若さでこの世を去った天才が「世界はひとつ」と訴えた「イマジン」が頭の中に浮かんでくる。政治に翻弄(ほんろう)されることなく、日韓の芸能界も観光業界も頑張ろうじゃないか。

(デイリースポーツ・木村浩治)

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