掛布DC 信頼得る選手目線の育成力

 阪神の掛布雅之DC(58)が若虎から絶大な信頼を得る、そのワケを探ってみた。

 昨秋の安芸キャンプでは、新井良や今成、森田らに「小ミスター」「小掛布」「小バース」などと、名選手になぞらえたニックネームをつけ、やる気を促していたが、指導力そのものについては未知数だった。

 指導者就任から今秋で1年になるが、若虎がめきめきと力を発揮し始めている。教えを請うた者に聞けば、まず「選手目線」であることを挙げる。伝統球団のビッグネームが、名のない選手と1対1で向き合う姿をキャンプで目にしたが、これがマスコミ受けを狙ったパフォーマンスでないことは、2軍施設のある鳴尾浜球場へ行けばよく分かる。

 夏場、たまたま担当記者が1人も居ない鳴尾浜の練習をのぞいてみると、そこには安芸キャンプと変わらぬ風景があった。グラウンドレベルで40度を超える炎天下、掛布DCは、有望というより、なかなか芽の出ない若手のバッティング練習を熱心に指導していた。全体練習を終えても密着指導は続き、汗だくになりながらグラウンドと室内練習場を何度も往復。選手が出遅れると「お~い、やるぞ!」と鼓舞、夕暮れどきまで居残り練習に付き合っていた。

 2軍のトレーナー陣に聞けば、これが連日のスタイルだという。

2軍主体のコーチ業を引き受けた以上、「当然」の仕事ことかもしれない。だが、言うは易しだ。「ミスタータイガース」と呼ばれるスターOBが名ばかりでなく、ここまで泥臭くやるのか…というのが、私の率直な感想。そして、何よりその指導法が「分かりやすい」と現場で評判になり、「育成」に直結しているというのだから、球団の思惑通り、申し分ない。

 3年前のドラフト1位・伊藤隼(慶大)はいわゆる掛布DCの申し子で、今季1軍で芽が出た1番手だろう。本紙評論家の金本知憲氏は「掛布さんのように自分で基礎から作り上げた人は、根拠がある」と言う。2人は何度か現場で打撃論を交わしていたが、金本氏いわく「バッティングの考え方が自分のものとよく似ているわ。言いたいことがよく分かる」のだとか。ドラフト下位からはい上がった者同士、共有するものが多いのかもしれない。

 何年か先、生え抜きの「名将」が常勝軍団を築きあげる、ファン待望の日がやってくるかもしれない。

(デイリースポーツ・吉田 風)

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