王座復帰の河野、興毅との夢対決は?
3月26日に後楽園ホールで行われたボクシングのWBA世界スーパーフライ級王座決定戦。フライ級に続く2階級制覇を狙ったデンカオセーン・カオウィチット(タイ)と、王座をかけて争った河野公平(ワタナベ)は4ラウンドに右カウンターで先制のダウンを奪い、8ラウンドには右、左、右の連打でタイの英雄をマットに沈めて鮮やかなKO勝ち。会心の勝利で世界のベルトを奪還した。
12年の大みそかに絶対的に不利といわれたテーパリット・ゴーキャットジム(タイ)に挑戦。戦前の予想を覆し4回KOで快勝して3度目のアタックで悲願の世界王座をつかんだ。ところが、昨年5月の初防衛戦では、リボリオ・ソリス(ベネズエラ)と微妙な判定となり、0‐2と僅差で虎の子のタイトルを失った。
試合後は「自分は絶対に負けていない」という思いがつのり、悔しさは増していくばかり。「お前が勝っていたぞ」と周囲の人々も励ましてくれたものの、敗戦という現実は変えようがなく、半ば引きこもりのような状態になったという。家族ですら声をかけられない時期があり、「食事は一緒に取るんですが、ほとんど部屋から出てきませんでした。ボクシングの話は避けてましたね」と母・久子さんは当時の状況を振り返る。
しかし、河野がローブローで減点されるなど判定が際どかったため、所属ジムの渡辺均会長をはじめ関係者がソリスとの再戦へアクションを起こしてくれた。この思いに応えなければと再起を決意。しかし、ソリスは河野ではなく、IBF世界スーパーフライ級王者亀田大毅(亀田)との統一戦を選択してしまう。「やっぱりオレにはチャンスが回ってこないのか」と再び落ち込んだ。
ここから、誰もが予想しない事態が起こり始める。昨年12月3日に大阪で行われた亀田大‐ソリス戦の王座統一戦は、試合前日の計量でソリスが体重オーバーで失格、その場でコーラをカブ飲みする失態を演じたあげくWBAからタイトルをはく奪された。そのソリスが翌日の試合では奮闘して亀田大に判定勝ち。事前には亀田大が負けた場合には空位になると発表されていたIBF王座が、試合後にIBFの立会人が“負けても王者のまま”と前言を翻したことから、前代未聞の大ドタバタ劇となり収拾がつかなくなってしまった。
そんな紆余曲折をへて、ソリスの体重オーバーで空位となったWBA王座は1位(暫定王者)デンカオセーンと2位河野の間で争われることに。「勝ってチャンスを作ってくれた皆さんに恩返しをしたい」と燃えた河野は、タイの強豪をマットに沈めて再びWBAのベルトを巻いた。こうなると、次は亀田興毅(亀田)との対戦を実現させてほしいものである。
亀田興は河野‐デンカオセーン戦をリングサイドで観戦。試合後に報道陣に囲まれ、「ランキング的にも次はオレやな。自信?1000%ある。地球がひっくり返っても負けることはない」と豪語した。現在、ジムの会長、マネジャーが日本ボクシングコミッション(JBC)からライセンスを停止されており、国内での選手活動ができない状況だけに、河野サイドの渡辺会長は「まずはJBCとの問題をクリアしてから」と慎重な姿勢を崩さない。
それでも亀田興とのビッグマッチが実現すれば、さまざまな点で大きな注目を集めることは間違いない。すでにライトフライ、フライ、バンタムの世界王座を制している亀田興にとって4階級制覇の偉業がかかることになる。さらに日本人との対戦はWBC世界フライ級王座を奪取した09年11月の内藤大助戦以来。というより、亀田興が日本人選手と戦ったのは、いまだにこの1戦しかない。ボクシングファンだけでなく、興味を抱く人がかなりいるのではないか。
ビッグマウスとド派手なパフォーマンスで試合を盛り上げるタイプの亀田興と、決して大言壮語せず真面目を絵に描いたような河野とは何から何まで対照的。実績、知名度では亀田興が上回るが、それでも「河野は30歳を過ぎてからも成長を続けている」と、渡辺会長は愛弟子の進化ぶりにひそかな自信を持っている様子。前述したライセンス問題など乗り越えなければならないハードルは残っているものの、ぜひ見てみたい夢のカードである。業界をあげて実現へ向けて動いてもらいたい。
(デイリースポーツ・北島稔大)
