大学野球部の部員数激増のわけ

 野球の明治神宮大会・大学の部は20日に神宮球場で決勝戦が行われ、亜大が7年ぶり4度目の優勝を飾った。

 今、大学野球が熱い‐。

 そう言われてもピンとこないだろうが、世間の注目以上に、大学野球が盛り上がっているようだ。関東、関西の大学の野球部員数を調べてみて驚いた。わたしが学生時代のころ(約20年前)と比べ、激増しているのだ。

 全日本大学野球連盟HPの加盟校部員数推移表によれば、2007~12年までのデータしか公開されていないが、ほとんどのリーグで部員数が増えていることが分かる。

 東京六大学リーグ(加盟校数6)が07年668人、12年805人。東都大学リーグ(同21)が07年1290人、12年1738人。関西学生リーグ(同6)が07年528人、12年745人。関西六大学リーグ(同6)が07年495人、12年771人。大学によっては1990年代に比べて1・5~2倍近くの人数に激増しているところもある。

 硬式野球部に限らず、他の部でも同じような傾向が見られる大学もある。なぜ厳しいと言われる大学の体育会クラブで部員数が増え続けているのか。

 関西のある大学関係者は「AO入試や指定校推薦の枠が増えたからではないか」と入試制度の変化を一つの要因として挙げる。AO(アドミッションズ・オフィス)入試は、主に面接や小論文などを通じて合否が決まるもので、あくまで人物重視。高校時代に部活動に力を注いだことも高評価となりうる。大学へ進学する際にスポーツ推薦枠に入れなかった選手が、AO入試で希望の大学野球部に進むことも可能というわけだ。

 指定校推薦は、大学が指定校枠を与えた高校での学業成績優秀者に対する推薦。基本的には成績上位者が優先されるが、どの生徒を推薦するかは高校次第。枠が広がれば2番手、3番手の成績でも推薦される。同じぐらいの成績であれば、部活動に力を入れてきた生徒が優先されることもあるだろう。

 かつて指定校推薦枠を持っていなかった野球の強豪高校が枠を確保し、その枠で野球部員が推薦されることもありうる。AO入試でも指定校推薦でも、野球を売りにして合格した学生は野球部に入部することが多い。

 少子化や不景気の影響で大学が経営難に陥る昨今。有名私立大学も早期に優秀な学生を確保しようと、推薦枠、付属高校を増やすなどの努力を重ねてきた。その結果、浪人比率は年々下がり、浪人をきっかけに大学では野球を続けなかった、というケースも減る。

 全日本大学野球連盟の内藤雅之事務局長(立大出身)は「継続率の上昇も関係しているのでは」と指摘する。数十年前までは、4年生まで続ける部員が3分の1程度という大学も珍しくなかった。

 かつて大学の野球部といえば、先輩からの“厳しい指導”が当たり前。しかも1年生はほとんどボールに触れず、走りっぱなしという練習が連日続くこともあった。その結果、部員数は絞り込まれていった。現在では複数の時間帯を設けることで、全員が練習に参加できる環境が確保されている。

 「4年神様、1年奴隷」と言われた極端な上下関係も薄まり、高校野球経験者が大学でも続ける気になりやすい状況にある。野球では無名校の出身者でも「自分もできるかも」と入部するケースが増えてきたという。

 日本社会の変化が投影されているようにも思える大学野球界。部員数増加で競争が激しくなれば、日本の野球レベルはさらに上がるはず。そう期待したい。

(デイリースポーツ・岩田卓士)

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