井村監督“言葉の壁”乗り越えた 戦い方知らぬ若い世代に愛情込めてイズム伝承

 「リオ五輪・シンクロナイズドスイミング・チーム・フリールーティン」(19日、マリア・レンク水泳センター)

 8人で演技するチームのフリールーティン(FR)で、日本=乾友紀子(25)、三井梨紗子(22)、箱山愛香(25)、丸茂圭衣(24)、中村麻衣(27)、中牧佳南(24)、小俣夏乃(20)、吉田胡桃(24)=が95・4333点をマークし、テクニカルルーティン(TR)との合計189・2056点でデュエットに続く銅メダルを獲得した。

 涙で顔をくしゃくしゃにした選手たちが、次々と井村雅代監督(66)の胸に飛び込んだ。低迷期に育って戦い方を知らない選手と、再建を託された厳格な指導者。当初は互いに“言葉の壁”があると感じるほどかみ合わなかった。

 2014年2月に井村監督が就任した頃。表彰台の常連だった時代に考えられない選手の姿があった。体は丸みを帯び、試合前に談笑-。「まるでよその国の選手を教えているみたい」と嘆いた。選手も強烈な指導に戸惑った。中心選手の三井は「日本語なのに、何を言っているか分からなかった」という。

 例えば「オフ」の考え方。井村監督からすれば「全員で合わせる練習はしない日」で、自主的に練習するのは当然だった。しかし休養や外出に充てていた選手には理解不能だった。リーダー格の吉田は「もう、やめさせていただきます」とたんかを切ったこともある。

 話し合いを重ねた選手に対し、井村監督も「押したり引いたり、なだめたり怒鳴ったり」と伝え方を探った。今は合宿中のオフにも朝5時ごろから選手がプールに集まる。

 何よりも過酷な日々の先にあった喜びが結束を強めた。14年10月、カナダでのワールドカップ。近年やられっぱなしだったウクライナを上回り、全員で涙ながらに抱き合った。吉田は大会後「世界でメダルを取りたい。続けさせてください」と頭を下げた。

 「私のことを天敵みたいな目で見ていた」(井村監督)と手を焼いた教え子たちがついに五輪のメダルを手にした。表彰式から戻った選手を「あんたたち、メダリストになっちゃったね」と出迎えた。皮肉っぽく聞こえる言葉は井村流の愛情表現。吉田は「楽しいことなんてなかった。でも、やめなくてよかった」と目元を拭った。

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