政務活動費９１３万円をだまし取ったとして、詐欺罪などに問われた“号泣元県議”こと元兵庫県議の野々村竜太郎被告（４９）の論告求刑公判が２５日午前、神戸地裁で開かれ、検察側は懲役３年を求刑した。

　これまで２回の公判で、核心部分である収支報告書の虚偽記載に関する質問などに「記憶がありません」「分かりません」と約１５０回、大連発していた野々村被告は、この日の最終意見陳述でも「医師に解離性健忘症の可能性もあると診断されている」と述べた。

　これまで「記憶障害の可能性」と説明していたが、新たに「解離性健忘症の可能性」と病名を口にした。ただし、弁護側は初公判時に診断書の提出を予告していたが、最後まで法廷で、診断書を証拠提出する手続きはみられなかった。

　検察側は、野々村被告が、検察や警察の取り調べ時に関しては、具体的な日時、取調官の姓名・階級や、部屋番号まで覚えてスラスラと口にしていることから「何の医学的根拠も説明もない」「捜査に関することは詳細に覚えており、著しい偏りがある」と疑問視し、「反省がみてとれない」と断じた。

　野々村被告は、意見陳述では今にも泣き出しそうな声で「この裁判の中で、多くの質問を頂戴しましたが…」「時間が経過しているうえ、医師に解離性健忘症の可能性もあると診断され、収支報告書を作成した際の記憶がございませんので、お答えできず、説明責任を果たせず、申し訳ございません」と述べた。

　最後まで収支報告書の作成に関して「記憶にない」で突き通し、７月６日の判決を待つことになった。

　なお厚生労働省のＨＰでは、「解離性健忘症」に関して「ある心的ストレスをきっかけに出来事の記憶をなくすものです。多くは数日のうちに記憶がよみがえりますが、ときには長期に及ぶ場合もあります。」との説明記載がある。