【舩越園子の目】スピースの悲劇
「米男子ゴルフ・マスターズ最終日」(10日、オーガスタナショナルGC=パー72)
最終日の午後1時ごろ。スタート前に練習場で球を打つジョーダン・スピースの顔は、2年前のこの日とそっくりだった。イライラしながら球を打つ仕草から焦燥感が伝わってきた。その顔を見たとき、今年は勝てないだろうと秘かに思った。前半から独走態勢に入ったときは、やっぱり顔による予想なんて当てにならないかなと思ったが、後半、彼が崩れていったとき、原始的な顔予想の精度の高さに、ちょっぴり鳥肌が立った。
後半は「すべてパーでも十分だと思った」にも関わらず、そこに安住できず、中途半端に勝ち急ぐ心が彼のゴルフの攻守の度合いを曖昧に変えた。「それが失敗につながった」。12番で池に落としたこともそのときの悔しげな顔も、2年前の再現だった。
穏やかな顔をしていた昨年のスピースが今年の12番ティーに立っていたら、1打目を池に落としても次打まで落としたりはしなかったはず。12番を5に抑えていたら「まだ首位タイでいられた」のだから。
だが、惜敗に終わったときの顔も2年前とそっくりだったことは朗報だ。「時間はかかりそうだけど、必ず悔しさを克服してみせる」。来年は昨年と同じ穏やかな顔で、再びグリーンジャケットを目指してほしい。
(在米ゴルフジャーナリスト)

