高知で大声援受ける17歳アフリカ少年

 藤川球児投手(34)が入団した四国アイランドリーグplusの高知ファイティングドッグス(FD)。同投手が初登板した6月20日のオープン戦は、高知市営球場に球団史上最多の2865人が来場するなど大きな注目を集めた。

 高知FDにとって記念すべき一日となったその日、藤川のほかにも地元ファンから大歓声を浴びた選手がいる。西アフリカ・ブルキナファソ出身の17歳の練習生、サンホ・ラシィナ君だ。

 この試合が初めての先発出場だったラシィナ君。「8番・三塁」でグラウンドに立つと、二回の初打席でいきなり中前に初安打を放った。「打ったのは真ん中のストレート。お客さんがたくさんいて緊張したけど、ヒットを打ててうれしい」。流ちょうな日本語で振り返った17歳は、27日のオープン戦でも1打席目に右前打を放ってスタンドから喝采を浴びた。藤川からも「頑張ってください」と激励を受けていたそうで、「藤川さんの後ろを守れてうれしい」とうれしそうに話した。

 ラシィナ君が野球と出会ったのは10歳のとき。ブルキナファソで活動していた日本人の青年海外協力隊員からプレーの仕方を学んだという。同国ではほとんど野球は知られていなかったが、ラシィナ君は仲間を誘って夢中で白球を追った。いつしかプロ野球選手になる夢を抱くようになり、2013年夏に来日。高知FDの練習生となった。

 約1カ月間の練習参加のあとに行われた入団テストは不合格だったが、球団はラシィナ君の身体能力の高さや野球を学ぶ真剣な姿勢を評価。昨年春に再び練習生として受け入れられた。

 高知FDにはもう1人、ブラジル出身の練習生・水野ジョナタン正一君(19)がいる。球団は日本で夢を追う2人を支援するために、ネット上で資金を募る「クラウドファンディング」を実施。滞在費や野球用具購入のための費用として約100万円が集まった。オープン戦で放ったヒットは、資金を提供してくれた人たちへの恩返しにもなったはずだ。

 昨年春にラシィナ君を取材したときはまだ日本語も話せず、グラブさばきやバットスイングもぎこちなかった。それからわずか1年余り。日本語は日常会話に困らないほどまで上達し、試合で140キロの球をはじき返せるまでに成長した。

 萩原淳コーチ(元オリックス)に話を聞くと「彼がチームで一番必死に練習している。ほかの選手も見習わないといけない。パワーがあるし、経験を積めば十分にやれるようになると思う」と高く評価していた。

 リーグの規定により、練習生がチームに在籍できる期間は2年間だけだ。ラシィナ君が来年もチームに残るためには8、9月に行われる後期リーグ戦(22試合)で、1試合だけでも公式戦に出場可能な25人の登録選手に入る必要がある。

 そんな厳しい現実を前にしているからこそ、地元ファンはこのアフリカからやってきた少年にひときわ大きな声援を送る。「高知でもっとプレーしたい。登録選手になれるように練習試合でいい結果を出すしかない」とラシィナ君。チーム残留をかけた17歳の挑戦に注目したい。

(デイリースポーツ・浜村博文)

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