山下氏・高知・島田監督対談(1)
デイリースポーツ評論家の山下智茂氏(70)=星稜総監督=が次世代の高校野球を考える企画の第3弾は、かつての野球王国、四国へ飛んだ。春夏2度優勝の名門復活を目指す高知・島田達二監督(43)を直撃。2大会連続でU-18日本代表コーチを務めるなど経験を積む一方で、夏の決勝では5年連続で明徳義塾に敗れる苦渋を味わっている。山下氏が次世代を担うと期待する指導者に迫った。
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山下総監督(以下、山下)「私は監督の1年目に、どうしたら甲子園行けるか、強くなれるかと考えて、広島と高知の学校を周ったんですよ。広陵、松山商、土佐、高知へ行きました。それほど、中四国は強豪ぞろいだった。今回は、四国の野球が最近なぜ弱くなったのかを聞きたいと思ってね。昔は“四国四商”(高知商、松山商、徳島商、高松商)と言われた。また、高知商、高知が強い時代があった。そして、池田の時代があり、最近は明徳義塾と済美の時代だが、かつての勢いはない」
島田監督(以下、島田)「昔は土佐に籠尾(良雄)先生、(高知)商業に谷脇(一夫)監督がいてうちに岡本(道雄)先生がいた。一番は指導者が頑張らないとダメだと思っています。そこに尽きる。(指導者が)しっかり勉強して子供たちと切磋琢磨(せっさたくま)していくことに尽きるのでは」
-東北なども力をつけている。
島田「他県もしっかりした指導者がいらっしゃいます。昔は暖かいところが有利だったが、今は雪国でもいい施設で練習できて、生徒も全国に散らばっている。地域差がなくなった。(四国が)怠けていたわけではないが、他の地域に力がついてきたということかなと思います」
山下「センバツ選考委員をしていると、四国の野球は基本に忠実で教え方がいいと思う。それが四国の野球のイメージ」
島田「一番の理由は軟式からやる子が多いということだと思います。四国は硬式チームが少なく、特に高知は硬式が1チームしかない。軟式から入り、硬式になった時にまず基本からとなる。他の地域だと硬式、リトル、ボーイズとある程度形ができあがっている子が多いが、四国の野球はたたき上げではないでしょうか。蔦(文也)さん(池田)、上甲(正典)さん(宇和島東、済美)、高橋(広)さん(鳴門工、鳴門渦潮=現早大監督)と練習の鬼と言われている方は多い」
山下「特長の違いもあるよね。健大高崎とか八戸学院光星とか、最近は打撃や走力がいいチームが多い。ただ、四国は攻撃力が少し弱い。投手中心に守りはいいが」
島田「それは感じます」
山下「だから(強力打線をつくった)上甲さんが行けば(全国で)勝てた」
島田「負けないためには守備が大事だと思うが、勝っていくためにはバッティングが大事と感じる。確かに四国のチームで打撃が強いイメージのチームは少ない。明徳義塾さんも、守備がいいイメージがあります」
山下「県立校の松山商、高松商、徳島商などは守りを中心としたしっかりしたチームをつくる。そこが影響しているのかな」
島田「野球も変わってきている。金属バットになり、走塁の意識も高まってきた中で、相変わらず守備というところで止まっているのかなと」
山下「そこで変わっていかないと四国の野球は変わっていかない。変われば、強い四国が復活するんじゃないか。投手でも岸(潤一郎=明徳義塾-拓大)とか安楽(智大=済美-楽天)とか、ああいう投手が出てくる。高知も公文(克彦=巨人)とか投手はいいのがいるよね。和田(恋=巨人)もいい打撃してた。応援してるんだけど」
島田「打者はあまり出てないですね。和田ももうちょっと。でも、順調には成長してます。おとなしいけどじっくりとやれる子なので」
山下「(2軍を見た)松井(秀喜)に聞くと、和田はいいよって言ってたよ」
島田「すごいことです」
-高知の少年野球は?
島田「超過疎の地域なので、小学校も中学校も(野球人口は)減っている。他競技も盛んになった上に子供たちの人数も減ってきたので。でも、自分たちは野球が最高だと伝えたいんです」
-部員数は?
島田「(1、2年生で)80人います。へたな子もいるし、うまい子もいる。特待生(制度)がないんで、なかなか大変な状況です。(取り組むのは)意識の部分が大きいですね」
山下「グラウンドは野球だけ?」
島「サッカーも使えますが、放課後は野球だけ使わせてもらっています。高知は暖かいんでボールが使える時期は長いです」
山「逆に体力づくりはどうしてるの?僕たちは、冬はノックとかバッティングができないんで、ウエートトレをガンガンやったりしていたけど」
島田「バッティングはそんなにしないんです。この人数では効率が悪い。トレーニングは多いです。その中で、軟式から硬式の野球を覚えていかないといけないし、野球しながら、トレーニングもしながらですね」(2に続く)