日帰り出張を繰り返したなどとうその報告書を提出し、政務活動費約９１３万円をだまし取ったとして詐欺罪などに問われ、さらに昨年１１月の初公判をドタキャンした“号泣県議”こと元兵庫県議の野々村竜太郎被告（４９）のやり直し初公判が２６日、神戸地裁（佐茂剛裁判長）で行われた。野々村被告は「収支報告書に虚偽記載し、政活費の返還を免れようとしたことは決してございません」などと起訴内容を否認。質問には「記憶にありません」を連発し、のらりくらりと逃げまくった。

　野々村被告が“公の場”に姿を見せるのは、世界の失笑を買った２０１４年７月の「号泣会見」以来１年半ぶりだ。頭髪をそり上げたスキンヘッド、体重も増加したようで、濃いグレーのスーツは二の腕やお尻の部分がパツパツに張っていた。

　めがねも掛けており、以前とはまるで違う風貌だったが、被告席に座ると挙動不審な“野々村劇場”が開幕した。号泣会見では手を耳の前にかざして質問を聞くポーズが注目されたが、この日は、顔を証言台にうずめるようにして質問者の方に右耳だけを向ける“新・聞こえないポーズ”を繰り出した。

　出廷直後には四方に頭を下げ、裁判長に「（前回の）欠席を謝罪させていただきたいと思います」としおらしさを強調。だが直後に「虚偽の収支報告書を提出して政務活動費の返還を免れようとしたことは決してございません」とあらかじめ用意したメモを読み上げ、罪状を否認した。

　被告人質問では「記憶障害」を主張し、収支報告書を改ざんしたことだけでなく、報告書を作成したかどうかについても「記憶にありません」を大連発。東京、福岡、兵庫・城崎温泉や佐用町への出張も覚えておらず、これまで東京や福岡を訪れたことがあるかどうかも曖昧にした。

　一方で、警察の取り調べを受けた際の記憶だけは鮮明で、調書を取った警察官の姓名、階級までしっかりと覚えていた。まだらの記憶を裁判長が指摘したが、明確には回答せず。裁判長に罪状否認のメモの内容を「覚えてますか」と尋ねられると、しどろもどろになって半泣きに。裁判長に「収支報告書が事実と相違したかもしれないけど、作成当時は分かっていませんでしたという意味ですか」と助け船を出されると、「はい」と答え、罪状否認の内容まであやふやになっていた。