宮崎駿監督が引退会見…「今回は本気」
引退を発表していたアニメ映画界の巨匠・宮崎駿監督(72)が6日、東京・吉祥寺で会見し「今回は本気です」と、現役を退くことを明言した。働ける時間を「あと10年」と設定し、今後は「三鷹の森ジブリ美術館」(東京都三鷹市)の監修などを行うとした。アニメ製作には携わらない意向だが「ぼくは自由です」と、短編製作などへの可能性もわずかに残した。過去に宮崎作品で声優を務めたSMAPの木村拓哉(40)や歌手・加藤登紀子(69)らは、偉大な実績に称賛の声を送った。
これまでも長編を完成させるたび、燃え尽きたかのように引退をほのめかしてきた宮崎監督だが、この日は事前に「公式引退の辞」を配布した上で会見した。冒頭部分では「何度も辞めると言って騒ぎを起こしてきて『どうせまた』と思われるかもしれませんが、今回は本気です」と、揺るがぬ決意を示した。
最大の理由は時間だった。宮崎監督は最新作「風立ちぬ」でも自ら絵コンテ(アニメのベースになるスケッチ)を描いているが、年々集中できる時間が減ってきているという。「最後までアニメーター(アニメの作画担当者)のつもりだった」という職人かたぎなだけに、監督のみに徹することはできなかった。
「風立ちぬ」の製作には5年かかっており、次回作となるとさらに時間がかかる。年齢も考慮して「もう僕の長編アニメーションの時代は終わったんだなと思います」と、引退を決断した。
今後は「三鷹の森ジブリ美術館」の展示品の修復や監修を行う意向だ。「車が運転できるうちは毎日アトリエに行くつもり」というだけに短編製作の余地もあるが「『引退の辞』に『ぼくは自由です』と書いたように、(製作を)やらない自由もあるんです」と、明言を避けた。
一時期に比べるとやせたため健康上の理由も懸念されていたが「映画を作るために体調を整えないといけなくて、外食をやめたんです」と説明した。今でも毎日愛妻弁当を持たせてくれる夫人には感謝のし通しだった。
大看板がなくなるだけに、後輩には「やっと上の重しがなくなるんだから『こういうのをやりたい』と言ってこないと」と、奮起を促した。宮崎監督と二人三脚で映画を作り続けてきた鈴木敏夫プロデューサー(65)は「高畑勲監督の『かぐや姫の物語』が11月23日に公開されますし、来年夏に向けてもう1本製作中です」と、スタジオジブリの今後に意欲的だった。
この日の会見には605人もの報道陣が詰めかけ、海外メディアも13の国と地域から出席した。一つの時代の終わりを、世界が見届けた。
