【7】私にだけの“金言”が実は…
「藤井かすみのよもやま話・第7回=師匠 岡本綾子さん1」
今週からは私の師匠である岡本綾子さんについてお話したいと思います。
私が初めて岡本さんとお会いしたのがプロ2年目、96年の開幕戦のダイキンオーキッドレディースでした。この試合がツアーデビュー戦だった私はあえなく予選落ち。クラブハウスで帰りの荷造りをしていると、クラブ契約を結んでいるミズノのプロ担当の奥田さん(女性)という方がそばにやってきて、私にこう言ったのです。
「あんた、岡本さんに教えてもらい。私が紹介してあげるから」。そのまま私は岡本さんの元へ連れていかれました。緊張で直立不動の私の横で、奥田さんは岡本さんに「ちょっとこの子、見てやってください」とお願いすると、「いいわよ」と二つ返事。その場で“弟子入り”することが決まりました。
もちろん、私にとって岡本さんは雲の上の人。ご存じのように岡本さんは元ソフトボールの選手で21歳の時にゴルフを始めました。同じくソフトボールをやっていた私がゴルフに転向してみようと思ったのも、岡本さんの存在があったのは言うまでもありません。
初めて一緒に練習ラウンドをさせていただいた時は頭が真っ白だったのでしょう。当時のことはまったく覚えていません。その後は毎週のように一緒に練習ラウンドしました。技術的なアドバイスもいろいろしていただいたのですが、なかなかそれが理解できなくて、試行錯誤の連続でした。岡本さんの頭の中を本気で見てみたいと思ったものでした。
岡本さんから教えてもらい、私のゴルフ人生の支えになった言葉があります。
「焦るな 慌てるな ひるむな」。
この言葉を私は胸の中でずっと大事にしていました。メディアの人からも、岡本さんからもらった言葉について、よく質問をされたんですけど、「それは言えません」って隠し続けました。
ところが、何年かたったある日、岡本さんの著書に、その言葉が書かれてあることを発見。思わず目を疑いました。「なんだよ~私だけに教えてくれた言葉じゃなかったのかよ~」。大ショックを受けたのでした。この続きはまた来週に。
◆藤井かすみ(ふじい・かすみ) 1967年11月30日、山口県岩国市出身。広島・安田女子高時代からソフトボール選手としてならし、東京女子体育短大時代は全日本大学選手権で優勝し、日本代表にも選出。23歳からゴルフを始め、95年にプロテスト合格。01年ベルーナレディースで初優勝を飾り、ツアー通算10勝をマーク。師匠は岡本綾子。夫は競輪選手の高橋健太。現在は兵庫・マスターズゴルフアカデミーでジュニアらを指導。162センチ、64キロ。