理にかなった?乙女走りでリオ五輪へ

 4月23、24日にリオデジャネイロ五輪代表選考会を兼ねた兵庫リレーカーニバルが神戸市内で行われた。女子1万メートルで日本人トップの2位となったのが、22歳の安藤友香(スズキ浜松AC)。都道府県駅伝では直近の2年連続で1区(6キロ)の区間賞。3月の世界ハーフマラソンでは日本人トップの10位と健闘した新鋭だ。すでにリオ五輪の参加標準記録はクリアしており、6月の日本選手権で初の大舞台の切符を狙っている。

 この日のレース中盤までは混戦模様だった。その中で、両手を下げたままほとんど腕の振りのない独特のフォームが目立った。上半身の動きは最小限だが、下半身は軽快なピッチで歩を刻む。腕を動かさずに足を動かすのは日常生活でも難しい。理にかなった動きとは思えないのだが、安藤は実にスムーズに走り、終盤に外国人選手に抜かれるまでトップを守った。

 本人はこう説明する。「もともと上半身の使い方がよくなくて、腕を振っても足と連動しなかった。それでこういう走り方に。私としてはまったく違和感はない」。しかし、この特徴的なフォームは学生時代から何度も修正されてきた。駅伝の強豪、豊川高を卒業後、実業団を2度移籍して2年前に現所属へ。里内正幸コーチらの指導であらためてこのフォームに落ち着いた。

 安藤は「これまで、チームに合わないのを人のせいにしてきた。自分のわがままで何度も移籍して周りに迷惑をかけた」と振り返る。しかし、今は「人との出会いが大事だとわかった。感謝の気持ちは忘れない」と考え方ががらりと変わった。

 引退を表明したアテネ五輪金メダリストの野口みずきは、150センチの小柄な体に不釣り合いなほど大きく腕を振るストライド走法だった。他競技、例えば野球でもトルネード投法や振り子打法は異色だったが、野茂英雄もイチローも己を貫いた末に実績をつくった。

 一流選手が持つ感覚は独特だ。自分自身で理にかなっているかどうかを見極める力も才能の一つ。ただ、それを尊重してもらえる機会は少ないのだろう。安藤が生きる場所を見つけたのは幸運だった。結果を残せるかどうか、後は自分次第だ。

 チームメートの清田真央は3月の名古屋ウィメンズマラソンで4位と健闘した。安藤とは少し違うが、こちらも上下動の少ないフォームが特徴的だ。

 「清田は“忍者”って言われてましたが、私は何だろう?ロボット走り?違うなあ」と安藤。ちなみにレース後、記者たちの間では冗談交じりの「欽ちゃん走り」に始まって「タラちゃん走り」(サザエさん)「バタ子さん走り」(アンパンマン)と珍名が相次いだ。ちなみに、記者が原稿に記したのは「乙女走り」。紆余(うよ)曲折を経てたくましく成長したランナーには、少しかわいらし過ぎたかもしれない。(デイリースポーツ・船曳陽子)

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