韓国で「野球学校」創立 小学生向け週2回で月2万4千円

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 韓国ソウルの南東部に位置する城南市に、このオフ、本格的な「野球学校」が創立された。小学生からプロまで対応できる、いわば個人レッスンを主目的としたアカデミーで、プロなどのハイレベルとなると、コーチとマンツーマンの個人レッスンまで受けられる。スタッフはすべて元プロ経験者で、実績あるメンバーだ。なにしろ名誉校長にあたる「総監督」は、KIAの前身であるヘテ・タイガースやサムスン・ライオンズで監督を務め、通算22年間で1400勝を残した金応龍氏。コーチ陣も韓国のファンなら必ず知っているような顔ぶれだ。11月の開校式典には、名だたるプロ野球関係者も列席した。

 ちなみに「学校」という名称ではあるが、正確には会社組織。スポーツデータサービス会社大手の『Sports 2i』が起こした。同校のトップは元韓国プロ野球委員会(KBO)で事務総長(日本の事務局長に相当する)を務めた李相日氏が社長となっている。

 李社長はいう。

「韓国にはいくつかアカデミーと称する私設組織がありますが、本格的なものはここが一番だと自負しています。目的のひとつは小中学生でまだ野球に馴染んでいない若年層に野球を知り、体験して貰うこと。一方では高校、大学などでプロを目指すような選手への個人レッスン。もちろん、シーズンオフにプロ選手の自主トレとしての施設利用もありますが、やはりプロ以外の選手への指導がメインと考えています」

 レッスン料は小学生で週2回、1ヶ月8回で24万ウォン(2万4千円)。プロを目指すハイレベルの選手では1回につき30万ウォン(約3万円)というから、決して安い金額ではない。それでも「11月に開講後、すでに40人以上の会員加入があり、複数の学校が契約してくれるなど、まずまずのスタートを切っています」(李社長)。

  韓国での野球人気は、プロなど近年の観客動員数も順調に右肩上がりで関心は高いが、底辺といえるアマは殊の外脆弱だ。たとえば日本の高野連クラスの組織に所属する高校は70校。これも2、3年前までは50校程度だった。またそうした学校の野球部ほど、勝利優先となり選手育成面はおざなりになりがちだ。同校では、そうした選手への適切なトレーニングの指導なども出来れば、と考える。ただ基本はあくまでも子供だという。

 「韓国でもリトルリーグは盛んです。しかしソウル市内だけなら200チームと、日本とは比べようもない少なさです。当校は、そうした底辺拡大の一助にと創られました」(李社長)。

 個人会員は、小中学生の場合、下校後の午後4時くらいから1時間半ほど。なかにはボールも持ったことのない子供への指導もあるのだという。いわば初心者に野球と親しむ場を提供し、一方では、野球塾のごとく専門的に、かつ適切な指導で能力を伸ばしていく。そんな意図で創られた。

 この学校のユニークさは立地にある。実は野球学校と聞けば、グランドを有した郊外の施設を思い浮かべるのが普通だろう。しかしこの学校は、ビルの中にある「屋内型」なのだ。1階が約200坪、2回が150坪で人工芝が敷き詰められている。ちょっと見は、球場やキャンプ地にある屋内練習場だ。メリットは天候に左右されず、市内中心地に近いため利便性もいい。デメリットはやはり、グランドでしかできない練習不足になることか。これはこの学校の課題でもあると李社長はいう。

「今後、城南市とグランドの利用に関しての交渉もしていきますが、こちらも民間企業のため課題も残ります」

 そんな“実戦不足”の解消も兼ね、同校では『ブルーハンダス』というチームを結成することになっている。今月には小中学生のトライアウトも実施する。

  李社長はいう。

「選手の育成は、一朝一夕で結果が出るものではありません。この学校も長期的に運営できて初めて価値が出るものだと思います。ただプロ出身者が中心となっての学校だけに、正しい指導が出来る」

 この野球学校からプロにドラフト指名される選手がいつ輩出されるか。そのときが楽しみだ。

 

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