韓国の「弱点」突いた侍J大谷

 「プレミア12・1次ラウンド、日本5-0韓国」(8日、札幌ドーム)

 プレミア12開幕戦後、韓国代表の金寅植(キム・インシク)監督は「大谷はフォークが素晴らしかった。いい投手に打者がついていけなかった」と敗因を挙げた。実際、大谷の投球は絶品だった。最速161キロを見せ、フォークを落とす。勝手知ったる日本の打者でもそう打てなかったはずだ。

 しかし、このシンプルな攻め方も、韓国にとっては「最も突かれたくない弱点」と言えた。韓国の打者は概して高低の揺さぶりにもろい。高めに速球、低めに落とす。はまれば、ワンバウンドでも空振りしてくれるし、フォークが来る前に勝負を決めようと急げば、高めのボール球でも手を出してフライを上げてくれる。

 もともと積極的に打ちに来るのが韓国。基本がそうなのだから、大谷の攻めは最も効果的だった。また「韓国の打者は変化球は弱いが、速球にはめっぽう強い」というイメージがあるようだが、厳密には違う。同じ速球でも伸びがあり、いわゆる「強い球」は対処できない。これは球速とは別の話だ。

 日本代表にはこの「強い球」を投げる投手がそろっている。勝負には運不運がつきものだが、この「強い球」を投げ込む姿勢さえ崩れなければ、今の韓国打線はそう怖がる必要はない。韓国の10三振は無策による結果ではなく、必然だったのだ。そしてそれは他ならぬ選手たちが最も分かっている。

 こうした兆候は、来日前、キューバとの2試合の強化試合でも垣間見えた。初戦は6-0での快勝だったが、先発のエラなどスライダー中心の投手は捉えても、モンティエートやガルシアといったナックルカーブなどでボールを動かす投手は打ちあぐんだ。それでも勝てたのはキューバ投手陣に「強い球」を投げる投手がいなかったからだ。

 ちなみにこの試合で朴炳鎬(パク・ピョンホ)内野手は4打席で3三振だった。このあたりから不調の選手たちが目につき始めた。2戦目は1-3で負け。キューバの先発トレスは直球が140キロ台だがフォークがよく落ちた。これに韓国打線がはまり、三振かゴロでヒットが出ても散発だった。

 韓国の選手気質として、練習と本番に対する意識は違う。練習はあくまで練習。本番になればスイッチが入る。それが韓国の良さでもあったのだが、今大会、いや2年前のWBCあたりから、国際大会へのモチベーションが上がって来ていない。それだけ国内リーグが盛り上がり、選手も充足しているのだ。だから外国人記者がケチをつけるのは筋違いなのだが、かつての「尖(とが)った韓国」を知る者としては、やはり物足りなさを感じてしまう。

 そして札幌入り。大谷の封じ込めてくるような投球。韓国打線は反発する気配を見せなかった。

 今大会は1次ラウンド5試合で2敗までがギリギリのライン。韓国からすればまだ1敗できるわけだが、果たして台湾入りしてムードを変えてくるだろうか。

 韓国の知人からは「韓国では開幕が日本戦だからファンもマスコミも多少盛り上がったが、負けてはあとが…」と寂しい知らせが届いた。日本戦での屈辱のコールド負けが発奮材料となり、その後の躍進があった2009年のWBCのように立ち上がってくるのか。それともよもやの台湾1次ラウンドで敗退した13年WBCの繰り返しとなるのか。

 韓国は、こんなもんじゃない…そう思いたい、いや思わせて欲しいのだが。

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