マツダの練習場に新井監督の軌跡 「ほぼほぼ覚えていましたね」
マツダスタジアムの屋内練習場の壁面がこのたび、約3年ぶりにリニューアルした。今回の壁面には今季から就任する新井貴浩監督(45)をテーマに、「ガムシャラ」に駆け抜けた現役時代をメインにデザイン。記憶に残る表情、懐かしい名シーンを見つけながら、記念撮影スポットとしても利用が可能だ。
球場が近づくにつれて、新指揮官の表情がいくつも浮かび上がってくる。カープファンのみならず、街行く人たちの目にも留まる新たなスポット。現地に足を運んだ新井監督は「色んな表情がありましたが、若い時から現在に至るまで、ほぼほぼ覚えていましたね」と少し照れながら振り返った。
計27個の写真がちりばめられた壁面。プロムナードの入り口付近にあったのは、若き日の指揮官が正座しているシーンだ。
入団1年目の1999年、広島市民球場で2軍の試合に出場。「けっこう打ったんですが(とある打席で)ストライクを見送ったということで『正座しておけ』と。市民球場のホームベース前で正座しました。懐かしいです」。当時はファンがまだスタンドに残っていた中、正座。励ましてくれた記憶も自然とよみがえってきた。
勝利の喜びに浸る表情もあれば、サヨナラ本塁打を放ってベンチに向かってガッツポーズを決めるシーンもある。その一方、凡退した際の悔しい表情も壁面には刻まれている。
長い現役生活。リーグ3連覇に2000安打と輝かしい栄光もあるが、根底に根ざしていたものがある。「笑顔の写真もあるけど、(それより)はるかに多く悔しかった時の表情が多いと思う。うれしかったことより悔しかったこと、苦しかったことの方がはるかに多い野球人生だった。やっぱりたくさん苦しまないと、こういう最後に向かっての笑顔はないのかなと」。
苦しんだ分だけ、喜びもひとしお。うまくいかないことが多くても、その都度、歯を食いしばってひたむきに汗を流してきた。その軌跡を目にして、感慨深げにそう語った。
球場に来訪する人々へのファンサービスにもなる。「マツダスタジアムに来ていただく皆さんがここを通った時、楽しんだり、喜んでもらえるのが一番。また今年頑張らないといけないな、という気持ちになりました」と新井監督。初心を思い返しつつ、監督として新たなページを刻む。
◆新井 貴浩(あらい・たかひろ)1977年1月30日生まれ、45歳。広島県出身。現役時代は右投げ右打ちの内野手。広島工から駒大を経て98年度ドラフト6位で広島入団。2008年にFAで阪神移籍後、15年に広島復帰。18年に現役引退。本塁打王1回(05年)、打点王1回(11年)、最優秀選手1回(16年)、ゴールデングラブ賞1回(08年)、ベストナイン2回(05、16年)。NPB通算成績は2383試合で2203安打、319本塁打、1303打点。打率・278。06年WBC・08年北京五輪日本代表。





