広島ドラ7久保 未来開けた恩師の電話 「ワシの夢はおまえがプロで活躍する姿を見ることや」
広島に育成選手を含め10人の新人選手が来季加わる。ドラフト7位・久保修外野手(22)=大阪観光大=は同大学初のプロ野球選手。大学で出会った恩師のお陰でこの道が開けた。
背番号56の真新しいユニホームを着て久保は晴れやかな表情で入団会見のひな壇に座った。もしも、あの電話がなかったらどうなっていただろうか。
大阪観光大2年の夏だった。足首を捻挫して松葉づえをついていた。歩くのもままならない日々。コロナ禍で人と会うことも難しい時期だった。
「何をするのもイヤになってもう辞めたいなという感じでした。しんどかったです」
約3カ月なにもしなかった。野球を辞めるつもりだった。そんなとき、1本の電話がかかってきた。伊勢孝夫氏からだった。
「グラウンドに上がってこい!」
ヤクルト、広島、巨人などでコーチを歴任し、大学のアドバイザーを務めていた。足を引きずりながら向かうと伊勢氏は言った。
「ワシの夢はおまえがプロで活躍する姿を見ることや」
全身に衝撃が走った。久保はまったく見えていなかった未来が見えた気がした。
「モチベーションがぐっと上がった。自分だけの夢じゃない。周りの人のおかげで今がある。本当に恩返ししたいなという気持ちになりました。それがなかったらそのまま辞めていたかもしれない」
歩けるようになるとがむしゃらにバットを振った。ときには伊勢氏が打撃投手を務めてくれた。
「全体練習が終わってからの自主練習に1番力を入れました。打撃に力を入れて。3、4時間くらい。トレーニングとバットを振ることを意識して」
いつしか、無名大学ながら試合にプロのスカウトが現れるようになった。
50メートル走5秒9の俊足と強肩が武器。伊勢氏は「足と肩は今すぐ1軍で使える。打撃は右方向にも長打が打てる」と期待を寄せた。恩師の夢をかなえるために、1日も早く1軍の舞台に向かうつもりだ。
◆久保 修(くぼ・しゅう)2000年9月29日生まれ、22歳。大阪府出身。181センチ、81キロ。右投げ右打ち。外野手。千代田小2年時にジュニア千代田で野球を始め、千代田中では河内長野ボーイズに所属。石見智翠館では2年夏にベンチ入り。大阪観光大では1年春からレギュラー。50メートル走5秒9。遠投120メートル。憧れのプロ野球選手はカブス・鈴木誠也。好きな言葉は『一番』。




