広島・中村奨 七夕に願い届けた地元への恩返し弾 広陵・中井監督の言葉胸に
デイリースポーツの記者が今年を振り返る企画「番記者ワイドEYE」。今回は広島の中村奨成捕手(22)が地元で本拠地初本塁打を放った7月7日のDeNA戦(マツダ)です。広島担当の赤尾慶太記者(25)が七夕の夜空に描いたアーチを振り返ります。
プロ入りから4年。この瞬間をずっとカープファンは心待ちにしていた。快音を響かせた打球がマツダスタジアムのバックスクリーンへ吸い込まれると雰囲気は一変。球場からは割れんばかりの拍手が起こり、祝福ムードに包まれた。小さく拳を握り、表情を緩めながら、ダイヤモンドを一周した中村奨は「弾道とか角度的にも完璧だった。もしかしたらと思って走っていた」とうれしい本拠地初アーチを振り返った。
3点ビハインドの六回だった。代打で登場するとカウント1-1からDeNA・今永の高め直球を振り抜いた。6月19日のDeNA戦(東京ドーム)で待望のプロ初本塁打を放ったが、それ以降は15打席連続無安打と不振に苦しんでいた。しかし、「数を振って調子を取り戻そうと思った」。不調時の映像を見直し、復調のヒントを探るなど地道な努力を重ね、それが結果となって表れた。七夕の夜空に描いた2号ソロは反撃ののろしとなり、劣勢の展開を何とか引き分けに持ち込んだ。
ここまでの道のりは決して平たんではなかった。広陵では3年夏の甲子園で1大会6本塁打の新記録を打ち立て、一気に注目を浴びる存在となった。だが、プロ入り後2年間は1軍出場なし。昨年もわずか4試合の出場にとどまり、プロの厳しさを味わった。それでも、支えになったのは広陵の中井監督の存在だった。1軍昇格時や初安打を記録した時など節目の際には毎回連絡を取り、「自信を持ってやりなさい」という恩師の言葉を胸に刻んで必死に鍛錬を重ねた。
広島で生まれ育ち、2軍の大野練習場がある廿日市市出身と、文字通り地元の星だ。広島の誰もが栄光も挫折も知っているからこそ、あの夏を思い起こさせるような強烈な一発に鯉党は酔いしれた。
今季は本職の捕手だけでなく、出場機会を求め、外野にも挑戦した。七夕に放った地元への恩返し弾。どうか1軍で活躍できますように-。そんなファンの願いが届いたように思えた瞬間だった。
