黒田氏&新井の新春対談【上】黒田氏「ライバル大補強でもカープは負けない」

 昨季限りで現役を引退した黒田博樹氏(41)と、広島・新井貴浩内野手(39)の夢対談が新春に実現した。カープ愛にあふれる2人の言葉は、昨年の戦いから、数年後のチームへの思いなど多岐にわたった。リーグ連覇、日本一を目指す2017年。去りゆくレジェンドが後輩たちに向け、最後に伝えたかったメッセージとは。【上】【下】2部構成でたっぷりお届けします。

  ◇  ◇

 -明けましておめでとうございます。

 黒田氏(以下黒田)「おめでとうございます」

 新井「おめでとうございます。よろしくお願いします」

 -黒田さんは引退して約1カ月。実感は。

 黒田「まだ全然、湧かないですね。普段と変わらず。でも、ずっと体を動かさないと気持ち悪くなってくるので、たまにジムとかには行ったりしますけど」

 -改めて2人にとっての昨年とは。

 黒田「僕自身はやっぱり、最後に優勝させてもらってね。今まで経験したことがなかったことなので。最後の最後に優勝できて出来過ぎの野球人生でした。20年間一生懸命やってきたのが、最後に実を結べたなと思います」

 新井「本当に最高の1年でした。黒田さんに関してはドラマでもないような…。日本に帰ってきたこともそうですが、終わり方も。ドラマでそれやったら、そりゃないでしょっていうくらい(笑)。すごかったですし、正直うらやましいっていうのもありましたね」

 黒田「ハハハッ。これは逆に、新井の引き際が楽しみだね(笑)」

 新井「本当、難しいんですよ!!」

 黒田「でも、それを超える可能性はあるじゃないか」

 新井「どうやったらあるんですか!?」

 黒田「優勝が決まる日本シリーズの最後の試合で決勝ホームラン。それが最後の打席になるかもしれないだろ」

 新井「それは…絶対にないですね!!」

 黒田「僕自身の考え方として、真剣勝負で終わってほしい。そのためには最後まで優勝争いとか、優勝を決める試合で最後を終えてほしいなって。自分自身がそうできたので。消化試合の中での最後じゃなく、真剣勝負で目いっぱいにやって。その中で最後の打席であってほしいと思います」

 -連覇へチームの土台はできた。どんな戦い方をするべきか。

 新井「昨年とまずは一緒。目の前の試合に120%で戦っていく。少しでも余裕を見せたら、そこでやられる。相手はヨーイドンの段階で、このやろう、今年はやり返してやるぞって、主戦級をぶつけてくるでしょう。好きにはさせんぞ、と。間違いなく厳しい戦いになる。昨年以上に勝ちたい、という気持ちを持たないといけない」

 黒田「自分がやるわけじゃないんですが…。新井が言ったように、昨年以上に周りの見方は変わってくる。余裕も当然、ないでしょうね。昨年のようにはいかないというのは頭に入れておかないと。ただ昨年、優勝できたというのは、すごくプラスになることもある。特に投手では祐輔(野村)が出てきて、今年がすごく大事。皆が昨年以上の成績を残す気持ちでやらないと、厳しくなるでしょう」

 -巨人、阪神の大補強はどうみるのか。

 黒田「それは当然。チームとしてはどんな手段を使っても、というか、ルール上の中での補強。チームとしての努力としてやらないといけないことなので、当然だと思います。ただ、カープはそれに全然負けないチームだとも思う。連覇をしてほしいなと思いますね」

 -黒田さんはシーズン中に引退を決断。優勝で肩の荷が下りた。

 黒田「そうですね。それまでにもある程度、ゲーム差も開いていたので。あとは若い選手を含めて、打撃陣も投手をカバーしてくれて、引っ張ってくれた。あの試合(9月10日・巨人戦)で決まらなくても時間の問題。あのころくらいからほぼ、そういう気持ち(引退)でいましたけどね」

 -もし優勝していなければどうしたのか。

 黒田「ほぼ、優勝できなくても辞めていたと思います。でも、いい巡り合わせというか。逆に優勝が自分にとって、後押しになったというのはありますね」

 -2人が昨年、伝えてきたのは広島の伝統。プレースタイルだったり、団結力だった。

 黒田「僕と新井に関しては野球に対する考え方が共通することがたくさんあった。ただ、自分たちで自問自答していることでもありました。言っていること、やっていることが正しいかどうか、それは人それぞれ野球観も違うわけで。なかなかそれを自分たちが証明することがなかった。ただ昨年、形となって優勝できた。特に野手は新井を見て、プレースタイルが変わった選手がたくさんいたので。そういう部分で、自分たちがやってきたことが間違いじゃなかったんだなっていうのを分かった1年でしたね」

 (続けて)

 黒田「野球選手は個人事業主だから、いろんな考え方があっていい。ただ、チームに所属する一選手としては、やっぱり足を引っ張ることはダメなので。僕らは特に若いころ、いろんな選手を見て育ってきた。いい人もいれば、そうでない人も見てきたので。そこで自分たちの野球観を作ってきて、結果を残すことができた。それを若い選手がどう感じるか。昨年、新井がいなければ、それを見ることもできなかった。僕らがいなくても30代の選手はいます。素晴らしい選手はたくさんいるけど、40歳手前になってMVPを取る活躍をする選手を見ることができるのは、彼らにとって財産になると思う」

 新井「僕はとにかくどんな時でも一生懸命やるぞっていう姿を見せないといけない使命感、責任感はありました。(先輩を)選ぶのは自分だと思うんですよね。いいと思ってくれているかは分からないけど、明らかに昨年変わったなっていう選手もいた。2年前は後輩たちも、どんな選手か見ていた部分があると思うので」

 黒田「たぶん、今までは少なかった選択肢が、新井とか僕とかが帰ってきて増えたのはあると思う。結果を残すことで余計に説得力があるというか。2割そこそこで試合にも少ししか出ないとなったら、若い選手はそこを目指さないでしょうし。プロの世界とは結果が全て。今年ダメなら周りは過去を振り返ってみてくれない。この年齢で過去を捨てて勝負して、それを見て“ああなりたい”というのを見ることができたのは、若い子たちにとってよかったんじゃないかなと思います」

 -中堅選手がもうひとつ殻を破れないというのはあるのか。

 黒田「それは本人たちに聞いた方がいいでしょ。ただ、僕からしたら本当に歯がゆいというか。新井も一度低迷した時期があって、もう一度上がってきた。やっぱりそれを目の前で見れたわけなので。感じていると思うけど、何か物足りないのもある。30過ぎたらすぐにベテラン扱いされる風潮が結構あったんじゃないかと思います。30歳でベテランって言われるのがすごく違和感があって。僕がアメリカに行ったのが32歳。今の30歳、31歳なんてまだまだこれから挑戦して、もうひと花、ふた花咲かさないとだめ。ベテランの感覚になっている選手が多いんじゃないかな。辞めたから好き勝手言ってますけどね(笑)」

 -時間がない、と。

 黒田「それが全てだと思います。過去のことなんて、終わってから考えればいい。何をしたとか、何勝したとか。何本ホームラン打ったとか、それは終わってから。毎年、毎年、今年が勝負だと思って戦ってほしいです」

 新井「僕が若かったころから黒田さんは雰囲気が違いました。最初は全く余裕がないので『ちゃんとせんにゃあいけん』と。別に何か言われたわけじゃないけど、そんな感じでした。よく言うんですけど『ポジティブな悲壮感』。悲壮感にも種類がある。僕もだんだん結果が出始めて、今度は『クロさんを勝たせたい』と思うようになった。そういう気持ちにさせてくれるような投手」(【下】に続く)

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