黒田ベンチ裏で終戦 次は新井監督をサポート?ファンは待っている男気伝説第2章

 「日本シリーズ・第6戦、広島4-10日本ハム」(29日、マツダスタジアム)

 32年ぶり日本一の夢はついえた。日本シリーズを最後に現役引退を表明し、第7戦に先発予定だった広島・黒田博樹投手(41)は、登板機会なく試合終了。最後にグラウンドに姿を見せると、万雷の拍手と「ありがとう」の声が飛んだ。25年ぶりのリーグ優勝に導いた男気伝説は終了。日本一の夢は「最高のチーム」という後輩に託す。黒田博樹よ、永遠に-。

 現役最後の試合はベンチ裏で見届けた。登板機会なく20年間の現役生活が終了。だが、表情は晴れやかだった。真っ赤に染まった球場で、日本シリーズを戦うナイン。遠い昔の記憶が脳裏をよぎる。閑散としたスタンド。黒田は勝ちに飢えていた。あれから十数年。カープは強くなった。

 「まだ実感がないです。日本シリーズの舞台に立てるとは思っていなかった。一緒に戦ってきた仲間に感謝したい。これまで一生懸命、野球をやってきてよかったと思います」

 右肩痛に右足痛。首の痛みも抱えながらシーズンを戦った。25日の第3戦登板では六回途中、両足をつるアクシデントで途中降板。何カ所にも、何十本もの注射を打ちながら、体は既に限界を超えていた。それでも中4日での第7戦登板に備え、「全然、大丈夫」とナインを、自らを鼓舞し続けた。最後までチームとともに闘った。

 「広島に僕を待ってくれる人がいるから。カープで投げた方が1球の重みが感じられる」。2年前、終着点を探していた黒田は、広島に電撃復帰を決めた。昨オフ、引退に傾いた心は後輩たちの言葉で引き戻した。「責任とプレッシャーがあった。2年間、マウンドに立ち続けることができて、ホッとしている部分はある」。後輩に、ファンに愛された野球人生。25年ぶりのリーグ優勝は、黒田抜きには成し得なかった。

 「娘の学校の少年野球チームの監督がやりたいなあ」。黒田には夢がある。野球を楽しいと思ったことは一度もない、と言う。だが、野球に憑(つ)かれた男だ。「オレより監督は新井とかの方がふさわしい。将来、新井が監督をやるべき。あいつがやるなら全力でサポートする。陰でサインを出しとくよ」。現役生活20年。共に広島の低迷期を戦い、共に戻って、共に悲願を達成した盟友。“第2章”も共に歩みたい。

 黒田の言葉に新井は驚く。「オレにはできない。でもクロさんがやるなら、何でもいいから力になりたい」。新井にもまた、夢がある。「クロさんがやるなら監督付きを。広報かマネジャーをやらせてもらいたい」。20代、球場でも食事の席でも、口を開けばチームの話だった。勝ちたい、球場を満員にしたい。その一心だった。広島を愛し、カープにささげた野球人生。終わりはまた、始まりでもある。いつかまた2人で。思いは受け継がれる。

 「来年ぜひね、セ・リーグを連覇して。日本一になれなかったので、目指してほしい。今のチームはすごくいいチームなので。また来年、陰ながら応援したいと思います」

 去りゆく男は笑顔で後輩にエールを送った。“最後の1球”は第3戦。大谷に投じた134キロのスプリットだった。両足がつっても投げようとした。途中降板に「すみません」の言葉が先に出た。最後までエースだった。「野球がない生活は想像できないんですけど。ちょっとゆっくりしたいですね」。静かに笑った。広島の街は忘れない。今までも、そしてこれからも。「黒田?あの広島を、優勝させた人じゃね」-と。

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