九里好投 初星お預けも次も任せた

 「ヤクルト4-3広島」(12日、神宮球場)

 広島は延長十回の死闘の末、サヨナラ負けを喫した。前日に続き、救援陣が打ち込まれて2連敗。3カード連続での負け越しとなった。ショッキングな逆転負けの中、今季2度目の先発・九里亜蓮投手(24)が6回5安打1失点の好投。2年ぶりの白星はお預けとなったが、先発投手が不足する中で、開幕2軍からはい上がった右腕が、今後の希望だ。

 丸の必死の本塁返球も間に合わなかった。ヤクルトファンの大歓声を背中に浴びながら野手陣は、グラウンドでぼうぜんと立ち尽くした。同点の延長十回、今村が1死三塁から坂口の中犠飛でサヨナラ負け。三塁側ベンチで敗戦を見届けた九里も、悔しそうに唇をかんだ。

 鋭い眼光で打者をにらみつける。闘志を前面に出して腕を振って投げた。今季2度目の先発マウンドに上がった九里は、走者を出しても丁寧に低めをついた。6回を5安打1失点、無四球の好投。勝利投手の権利を得てマウンドを降りた。

 「状態的にはあまり良くなかったです。とにかく気持ちだけは強く持っていこうと思っていました」

 初回に2点をもらいながら、その裏にいきなり無死二、三塁のピンチを招いた。山田の中犠飛で1点を失ったものの、後続を打ち取った。二回以降も走者を背負ったが、あわてることはなかった。

 昨秋宮崎で開催されたフェニックス・リーグで、面識のない楽天・則本に直談判してスムーズになるフォームについて尋ねた。楽天のエースのアドバイスで、ノーワインドアップだったフォームをワインドアップに変更。新スタイルで今季に臨んだ。

 開幕は2軍スタートも腐ることはなかった。結果を出して1軍に上がってきた。4月28日・ヤクルト戦(神宮)でロングリリーフの好投が認められ、5日・巨人戦(東京ドーム)に先発。六回に打たれ敗戦投手になったが、球界のエース菅野と五回まで互角に渡り合った。

 この日もヤクルトのエース小川に勝る投球を披露。サヨナラ負けに消沈する緒方監督も「九里はしっかり投げてくれた」と褒めた。ルーキー時代の2014年4月19日・DeNA戦(マツダ)以来2年ぶりの勝ち星は、救援陣がリードを守ることができず消えた。それでも「なんとか先発として最低限の仕事ができたので良かったと思います」と前を見つめる背番号12。その鋭い目は、折れることはない。

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