黒田の入団会見一問一答
広島・黒田博樹投手(40)が入団会見で思いの丈を語った。苦闘の連続だったメジャーでの7年間、今シーズンへの不安、エース・前田健太投手に対する思い…。熱い言葉の数々を、一問一答形式でお届けする。
-まずは復帰の報告を含めメッセージを。
「8年ぶりに広島に帰ってきまして、ファンの人たちの熱気というか、一段とすごいなというのを一番はじめに感じました」
-今の率直な気持ちは。
「今までカープにいて、そしてドジャース、ヤンキースを経験した中で、その中で一番多いメディアの人に囲まれて、ちょっと戸惑ってます。当然、緊張してます」
-鈴木球団本部長に電話で復帰の報告をする際に迷っている話があった。迷いは完全に抜けたか。
「現時点では…。あとは、沖縄に行ってユニホームを着て、そこで気持ちがしっかりするんじゃないかなと思います」
-カープ復帰の決断をしたのは、いつ頃。
「日本時間で(12月)26日、アメリカで25日でしたかね。気持ちを決めたと思ってても、なかなか1秒、1秒自分の考え方も変わってました」
-カープも粘り強く交渉を続けてきた。
「今年断ってしまうともう二度と口をきいてくれないと、そういう気持ちもありました。ずっと声を掛け続けてくれてたので、それが一番大きかったんじゃないかなと思います」
-メジャーの7年間を振り返って。
「一言で言うと、苦しかったです」
-具体的には。
「言葉も分からない中でシーズン162試合戦い抜く中で、体力的にも含めて、そしてやっぱり挑戦した以上はそれなりの結果を残さなければならないという自分で勝手にプレッシャーをかけて、7年間やったつもりだったので。そういう意味で楽しいというより、苦しいという思いが多かった」
-メジャーでは日本人投手初の30球団からの勝利に王手を懸けていた。
「記録が大事なのか分からないですけど、年齢を含めてそんな部分を考えるとカープに帰るとしたら、今年が最後じゃないかなという中で勝手に判断していた部分もあった。帰るのであれば今年しかないかな、ということで納得してます」
-今年しかないという結論に至ったのは。
「それを判断する、というのはなかなか難しいんですけど、年齢的な部分もそうですし、毎年メジャーではなんとかローテーションを守り続けてやってきたんで、そこを大事にしたいなという部分があった。果たして40歳、今年になってメジャーのハードなスケジュールの中でチームの期待に応えられるかな、とかを含めていろいろ考えました」
-カープという球団はどういう存在。
「最初にメジャー挑戦した時から、もし日本に帰ることがあればカープに帰ってきたいと思っていましたし、そういうことを口にはしてましたけど、その気持ちがぶれない限り、なんとかメジャーで結果を出し続けたいという、それが一つの自分の中でのモチベーション、考えとなっていたと思います。それくらいの気持ちにさせてくれるチームだと思います」
(続けて)
「まして今回、補強として新井がまたカープに帰ってくるということで、球団として懐の大きさというか、度量の大きさを改めて感じ、カープに復帰する一つの要因だったんじゃないかなと思います」
-新井選手と復帰年が同じ。縁を感じる。
「そうですね。彼自身も僕と一緒のFAの時に出て行ったので、彼以上にいろいろ悩みながら決めた決断でしたけど、僕が出て行ったことによって彼自身も、多少なりとも気持ちの部分で揺れ動いたところがあったと思うので、そういう部分で僕も多少なりとも責任を感じてますし…。またチームも一緒にプレーできるっていうのは良かったんじゃないかなと思います」
-カープで野球人生を終えることも視野に入れてる。
「もう40歳ですし、皆さんが期待するほどのピッチングができるかどうかも自信は全くありませんし、その中でもがき苦しみながらも投げたいかなと、それが一番ですね」
-期待と不安どちらが大きい。
「不安しかないです」
-8年前とはチームもガラッとメンバーも変わっている。カープの印象は。
「若い選手が主力となって戦っているチームだと思います。その中で僕がどういう役割でどういう立ち位置でどれだけチームに貢献できるかっていうのが全然見当もつかない。それはチームの中に入ってみて自分の役割をつくっていければいいかなと思います」
-前田投手にどういった言葉を掛ける。
「言葉ですか?彼ともあまりそこまでたくさん話をしたこともないですし、当然素晴らしいピッチャーというのは誰もが認めるところなので、今年1年チームメートとして一緒に戦っていくので、その中で僕なりに何が手助けできればいいかなと思います。それは彼に限らず若いピッチャー、若い選手がたくさんいるんで少しでも力になれればいいかなと思います」
-8年前は共にプレーしていた緒方選手が、現在は新監督となってチームの指揮を執っている。
「7年間、日本の野球から離れてたんで、バッターに関しても全然データのないバッターもたくさんいますし、そういう意味ではこれからオープン戦を含めて自分の中でいろいろ研究してやっていかないといけないかなと思います」
-緒方監督は黒田投手の復帰後初登板をマツダスタジアムで、と考えている。イメージは。
「う~ん、どうですかね。全然イメージは湧かないですね」
-日米通算200勝まであと18勝。
「現時点では正直な気持ちではそこにこだわりはないですし、やってみないと全然分からないことですし、現時点ではそこまで意識はしてないです」
-カープファンにメッセージを。
「8年ぶりに広島に帰ってきてどこまでできるか分からないですし、マウンドに上がる気持ちというのは何歳になっても変わらないですし、勝ちたいという気持ちも変わらないので、そういう気持ちを常にマウンドで出しきれればいいかなと思いますし、それを数多くたくさんの人に見てもらえたらいいかなと思います」
-メジャーの高額オファーが残る中でカープを選んだ。
「なかなか難しい質問ですね。アメリカでたくさんの経験をした中で、やはり応援をしてもらうことが当たり前じゃないことを感じました。野球界の広さというか世界の広さをたくさん経験した中で、広島という小さい町ですけど、そういう所に僕のことを待ってくれている人がいるというのを感じてました」
(続けて)
「当然、金額的なことを考えると、なかなか難しいところがありました。それ以上にマウンドに上がるときの気持ちを考えたときに、それも数少ないマウンドに上がる回数となると思っていたんで、1回、1回のことを考えると広島で上がった方が自分の中では充実感がある。メジャーで投げていたとき以上の何か違ったものが出せるんじゃないかという気持ちでした」
-広島で野球人生が楽しかったようになる。
「勝負ごとなんで野球人生がどうなるか分からないんですけど、最後に帰って来て良かったと思えるような野球人生にしたい」
-優勝、日本一への期待が高まっている。
「結構、プレッシャーなんですよ(笑)。プレッシャーを受けながら今まではねのけるためにいろんなことにチャレンジして野球をやってきた。特にニューヨークとか大きなところでプレッシャーを感じながらやってきた。それをはねのける自信まではないですけど、そういう気持ちでいます」
-日本復帰で対戦したい打者は。
「僕がいたときのバッターもたくさんいますし、そういう人たちと7年間対戦がないわけで、全くイメージが違うピッチャーになっていると思うんで、その中で対戦できればいい。若い選手に関しては、いい打者が出てきている。アメリカで7年間やってきたピッチングをそういうバッターにしたい」
-日本のマウンドやNPB球への対応は。
「マウンドに関しては実際、分からないことがたくさんある。球場によって傾斜も違う。投げていく中でアジャストしていかなければいけないと思う。ボールは、アメリカでもあれだけ広いんで、地域、球場によって変化の仕方が違う。しかもドーム、屋外の球場でもボールの動きが違う。自分の中で早い段階で把握しないといけない」
-日本での役割は。
「日本でプレーさせてもらうことになったんで、自分がアメリカでいろいろ学んだことを言葉だけじゃなく、対戦相手だったとしても、いろんなことを投げながら伝えることができるんじゃないかと思う。それが日本の野球界にプラスになったら、自分にとってうれしいこと」
-両親の墓前に報告は。
「年末に(米国へ)帰る前に行きましたけど、全く答えが出ずそのまま帰りました。両親がいればアドバイスを受けることができたんですが…。いろいろ考えて自分の親ならどう言ったかなといろいろ考えたこともあったんですが、結局答えが出なかった」
-家族はどういう反応。
「ドジャース最終年からヤンキース3年間を含め、毎年1年契約をしているんで、次の年のことはどうなるか分からない状態で過ごしてきた。今回、日本に帰ることに関しても1年契約で、想定内だったんじゃないですか」
(会見後の囲み取材で)
-米国でブルペンに入った。
「4回くらい入りました。キャッチャーを座らせて。その調整に関しては、メジャーにいたときの流れですね。だいたいキャンプに入る前に4、5回入る」
-沖縄でのブルペン入りは。
「沖縄に入って自分の体を動かして、ボールを投げてから」
-新しい球種にチャレンジしていると言っていたが球種は。
「十何年ぶりにカーブを練習しています」
-日本復帰に必要な球種か。
「日本、アメリカ関係なしに、ピッチャーとして進化していかないといけない。日本だからというのはない」
-シンカーの動きは。
「日本で投げていたときもある程度、自分の中で近いイメージで投げていた。日本のボールを使ってブルペンで投げていた。球場によってアジャストしていかないといけない」
-1月の自主トレ公開の際、8、9月にベストに持っていくと言っていた。
「アメリカと比べて登板数とか減ってくるんで、登板間隔も変わってくる。自分の体とピッチングコーチ、監督と話し合いながらになる」
-会見で自信がないと言っていた。
「今まであんまり自信を持ってシーズンを迎えたことがないんで。特にアメリカではある程度、実績がありますが、過去の実績で野球ができるんじゃない。もう一度、初心に戻って、また環境が変わって気を引き締めないと」
-イニングの目標は。
「イニングに関しては登板間隔、球数とかが左右してくる。それに関してはちょっとまだ目標を立てる部分じゃないかな」
-自主トレ公開時に、2桁勝利が一つの区切りになると言っていた。
「ローテーションで回る以上は、最低限2桁したい。ただ、勝ち負けはいろんな要素が絡んでくるんで、そこで判断するのは難しいかもしれない。一番はローテーションを元気で守ること」
-40歳というのは。
「40歳は30歳に戻れないですからね。40歳最初のシーズンですし、どこで何が起こるか分からない。その怖さはある。その中で求められること、1年フルで戦い続けなければならない。そういう不安はあります」
-40歳でできること。
「人と違う強みはいつ辞めてもいい、いつ壊れてもいいという気でマウンドに上がっているんで、それが唯一、人ができないことをできていること。そのマインドを変えずにいたい。例えば、日本復帰第1戦で肩が飛んで投げられなくなる可能性もあるけど、後悔しないし、それなりの準備をする」
-カープとも単年契約。
「球団から別に、複数年という話も一切なかったですし」
-日本に帰ってくる飛行機では。
「自分の中ではまだしっくりこない。半分夢の中のようなことでした」
-広島に来て実感。
「う~ん。一番は沖縄に行って、ユニホームを着て、そこでスイッチが入ってから」
-1日のキャンプイン初日ではなく、途中からのキャンプ参加。
「なかなか1日というのはね…。7年間、キャンプの調整、体のつくり方をしてきたんで、1日に合わせてやるのは、最初から鈴木さんに『無理ですよ』と。決断する前から話した中で、年齢的な部分とか含めてそこ(1日)に体をつくっていくのは時間が足りないというのを言っていた。それも理解してくれた上での話し合いだった」
-笑顔が多い。
「人が多すぎるなと思って」
-会見でユニホームは着なかった。
「あんまりしたくないというか、2日後ですから。今着て、2日後にまた見てもね。ワイシャツの上からですから。2日間待ってもらえればと思います」
-グラウンドで着たい。
「その方がいいんじゃないですか。18番だったらすごいですけど(笑)」
-緒方監督が開幕投手に前田を指名した。
「当然、マエケンが今までやってきた実績に関して彼がやるべき。僕自身、ある程度結果を残したといってもアメリカなんで。アメリカでできたから日本でできる世界でもない。それが妥当なこと」
-開幕投手へのこだわりは。
「そこにこだわりはないですし、特に7年間やってきた中で開幕戦の重さがあまりアメリカではない。開幕戦で完投なんてほとんどしないですし、85球くらいで最初の登板はみんな代わっていく。なんか気持ち的にアメリカの考え方と日本の考え方が違う。昔、(日本で)やってたときは完投とかしてましたけど、アメリカに行って考え方が変わった」





