スカウト視点からの高校球児逸材の見方

 龍谷大平安(京都)の初優勝で幕を閉じた第86回選抜高校野球大会。昨年まで阪神タイガースで25年間、スカウトを務めた菊地敏幸氏(64)が、甲子園のネット裏から注目選手の動きを追った。逸材をチェックする上でのポイントとは。スカウト的視点に立った観戦記をお届けする。

  ◇  ◇

 春先の時期、各球団はドラフト候補として300人前後をリストアップしているはずです。その3分の2が高校生。センバツが絞り込みのスタートとなり、視察は夏の大会までしか見られない高校生が中心になります。

 高校時代のトレーニング、素材次第では、阪神・藤浪、日本ハム・大谷、楽天・松井裕らのように高卒1年目から1軍戦力となる選手もいます。高校生でも即戦力と判断して見ることもあります。

 選手を見る前に頭に入れておく必要があるのは、球団の現状です。すでに若手の有望株がいたり、戦力が豊富なポジションの選手を推薦しても、あまり意味がありません。

 もちろん、ドラフト戦略の結論はまだ出ていません。しかし、スカウトは「この状況だから、こういう選手が欲しいだろう」ということを念頭に置いて、選手を追いかけていかねばなりません。

 阪神を例に、考えてみましょうか。まず、ベテラン3人がいて、なおかつ新人の梅野が開幕1軍入りした捕手は、最も優先順位が低くなります。投手は絶対数が必要。いくらいても、足りているということはないので、優先度は一番です。

 次に内、外野のどちらを優先するかですが、外野には伊藤隼、横田ら最近1、2位で指名した若手がいます。内野にも北條、西田らがいますが、未知数な選手が多い。ここは内野が優先。以上の理由から、私なら投手、内野手、外野手、捕手の順で選手を見ていこうと考えます。

 そして、今回のセンバツです。各球団15~20人ほどがリストに入っているはずですが、どこでも上位候補に残ってくるのは2人。佐野日大・田嶋大樹投手と智弁学園・岡本和真内野手です。

 田嶋君については、あそこまで「しなやか+強い」腕の振りを持っている投手はまれです。両方を備えた腕の振りという面では、大学生候補以上のものです。

 岡本君は2本塁打しましたが、あれだけ飛ばせる選手はそういません。余分な力を入れず、コンパクトなスイングからフォロースルーを大きくとれる。教えてもできない先天的な能力を生かしながら、成長してほしいものです。

 投手では、1回戦で投げ合った日本文理・飯塚悟史君と豊川・田中空良(そら)君もいいですね。体格は違いますが、2人ともリリースポイントがしっかりしていて、ばらつきがない。これは、プロでも直せない選手がいます。投手としての落ち着きもありました。なかなかできないことです。

 他には、スケール感を持った右打ちの内野手ということで横浜・高浜祐仁(ゆうと)君。同じ横浜の外野手・浅間大基君はバットコントロールのうまさが際立ちます。また、優先順位としては低い捕手ですが、関東第一・池田瞳夢(ひろむ)君の強肩は光っていました。

 センバツに出場した選手では、だいたいこんな評価順になるでしょうか。ただ、甲子園に出られなかったからといって、選手の評価を変えてはいけません。どうしても、甲子園で活躍した選手は評価が上になりがちです。出ていない選手もしっかり自分の目を信じて評価して、絞り込んでいく。そんなスカウトの仕事は、これからが本番になっていきます。

 ◆菊地敏幸(きくち・としゆき)1950年3月18日生まれ。法政二高から芝浦工大を経てリッカー。現役時代は強打の捕手。89年にスカウトとして阪神入団。藪、井川、鳥谷らを担当。13年限りで阪神を退団した。

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