バレ出た56&57号!日本新は虎投が被弾

 「ヤクルト9‐0阪神」(15日、神宮)

 ヤクルトのウラディミール・バレンティン外野手(29)が阪神(20)戦(神宮)の初回に榎田から左中間へ4試合ぶりに今季56本目となる本塁打を放ち、シーズン最多本塁打のプロ野球新記録となった。三回にも2打席連続となる57号を左翼席に運び、2003年に韓国・サムスンの李承ヨプが記録した56本を超えアジア新記録も達成した。残り18試合、2004年のダイエー・松中以来、9年ぶりの3冠王も見えてきた。

 新たな時代への扉をこじ開けた。夜空に描かれた美しい放物線が、バックスクリーン左へ吸い込まれていく。一回1死二塁。カウント2ボール1ストライクからの4球目、榎田の137キロ直球をフルスイング。ついに飛び出した56号アーチだ。誰も足を踏み入れたことのない領域に、バレンティンがたどり着いた。

 打った瞬間だった。打球の行方を見据え、その屈強な両腕を高々と突き上げた。もはや敵も味方もない。3万319人の歴史の証人たちは、スタンディングオベーションで、ダイヤモンドをゆっくりと回る最強助っ人の生還を見届けた。

 「どの球種を打ったのか分からないくらい興奮している。55号を打ってから長く感じたが、この満員の神宮球場で打つことができて本当にうれしい。チョーキモチイイ!」。三回には自ら記録を更新する57号で花を添えた。最愛の母・アストリットさん(64)をお立ち台に迎え、「夢の中にいるのかというような錯覚をしてしまう」と、新たな金字塔を打ち立てた喜びに酔いしれた。

 1964年に王貞治(巨人)が記録して以来、約半世紀もの間、破られることのない“聖域”だった。タイ記録に並んだ01年のローズ(近鉄)、02年のカブレラ(西武)は、残り試合でその“呪縛”に苦しんだ。故意ではなかったとはいえ、相手チームが執ようなまでに勝負を避ける場面が続き、世界のホームランキングのカベを越えることはできなかった。

 バレンティンは、そうした“歴史”を、自分なりに理解していた。本塁打を量産するにつれ、周囲から「55本」という数字の持つ意味、そして長年破られることのなかった経緯を聞かされた。人から情報を集めるだけでなく、自身でもインターネットなどで過去の記事を検索。松井秀喜氏が巨人入団当時、ホームランアーチストを期待する球団が「55」を託した背景も知った。

 日本プロ野球にとっての「55本」の重み。「外国人に抜かれたくないという気持ちは、分からなくもない」。だが、49年の時を経て、相手投手たちは勝負を挑むことをいとわなかった。「記録は更新されるもの。歴史を塗り替えられたということは、前に進もうという時期に来たということ。そういう機会を与えてもらって自分が成し遂げることができたのは、満足している」。2013年9月15日。尊敬する「サダハル・オー」を超え、忘れ得ぬアーチを球史に刻んだ。

 残り18試合。夢の続きへ、どん欲なバレンティンの挑戦は、終わらない。

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