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大空襲、震災くぐり抜けた奇跡の建物 贅尽くした迎賓館 映画「少年H」に登場

 「神戸迎賓館(旧西尾邸)邸宅レストラン ル・アン」の外観
 ランチは3700円から(税サ別)。写真はイメージ
 ランチは3700円から(税サ別)。写真はイメージ
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 戦前~戦後の神戸を舞台に描かれた、ある家族の物語「少年H」(2013年公開)は俳優・水谷豊、女優・伊藤蘭夫妻が29年ぶりに共演したことでも話題になった。劇中、主人公Hと父(水谷)が訪れるレストランとして登場したのが、神戸市須磨区にある「神戸迎賓館(旧西尾邸)邸宅レストラン ル・アン」だ。神戸大空襲でも阪神・淡路大震災でも生き残った“奇跡の建物”。大正ロマンあふれる洋館には、当時のセレブたちが集った栄華の面影が今も漂う。

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 昭和初期、少年Hこと肇(吉岡竜輝)が、洋服の仕立てを営む父(水谷豊)に連れられてこのレストランにやってきた。英国人シェフが注文した背広を届けるためだ。戦争が忍び寄る前、まだ平和だった時代のこと。父とシェフが言葉を交わす間、Hはケーキを食べながら待つ。このシーンは「レストラン ル・アン」のVIPルームで撮影された。

 撮影当時のレストラン支配人、堺谷義英さんは「水谷さんはとてもストイックな方だという印象を受けました。映画の役になり切っておられ、早朝7時ぐらいからの撮影でしたが、お昼近くまで食事も水も一切とられなかったと記憶しています」と振り返る。

 撮影が終わると水谷は「朝早くからご協力いただいてありがとうございました」と深々と頭をさげて帰って行ったという。

 「ル・アン」は、神戸迎賓館(旧西尾邸)の1階、元執務室だった場所を改装。建物は1919(大正8)年、貿易商で財を成した西尾類蔵氏が賓客をもてなすために建築した。風光明媚(めいび)な須磨に、華族や実業家らがこぞって別荘を造り華やかな一時代を築き上げた。

 その建物の多くが今では失われた中、旧西尾邸はほぼ当時のまま残る。敷地は3000坪で甲子園球場約6個分。セセッション(分離派)様式の主屋は2階建て、地下1階。エントランスにある大理石の階段は内部が暖炉になっている。各室のステンドグラスはクラシックでかわいらしく、何とも贅沢(ぜいたく)な雰囲気だ。洋館の周囲は茶室や池を配した日本庭園が取り囲む。

 1999(平成11)年に神戸市指定有形文化財となり、2007(平成19)年からレストラン、結婚式会場としての運営が始まった。ウエディングマネジャーの園田淑子さんは「2年後には築100年を迎えます」と述べ、映画にも出てきた神戸大空襲(1945年3月)でも焼け残り、阪神・淡路大震災(1995年1月)でも被害を免れたことから「“奇跡の建物”と言われています」と話した。

 本格フレンチは、地元産の野菜をふんだんに使用。「ファミリーで気軽にお越しください」と園田さん。

 戦争が終わって72年の夏。「空襲も震災ももういらんで」とつぶやくHの声が聞こえてきそう。

 ◆「神戸迎賓館(旧西尾邸)邸宅レストラン ル・アン」 神戸市須磨区離宮西町2の4の1 営業午前11時半~午後2時(LO)、午後5時半~午後9時(LO)。火曜定休TEL078・739・7600。JR須磨駅からタクシーで5分。山陽電鉄・月見山駅または須磨寺駅から徒歩10分。

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