お座敷SLで至福のおでん~大井川鐵道

 にぎわうお座敷車
 「がんばれ受験生 合格」と書かれた五角形ヘッドマークを付けたC11
2枚

 日本各地で積雪を記録した元日で幕を開けた2015年。まだまだ寒い日が続くが、こんな季節だからこそ楽しめる、静岡県・大井川鐵道の恒例ツアー「SLで行く静岡おでんと熱燗(あつかん)列車の旅」に潜入してきた。愉快な仲間たちとお座敷車両でくつろぎ、古き良き列車の数々に沿線で手を振る人々も。多くの魅力を再発見した旅だった。

 ◇   ◇

 「なんてたくましいんだろう」。一目見た瞬間、目が離せなくなった。日頃乗る電車とは異なる存在感に胸がときめき、青空の下で輝く「C11・190」のプレートの美しさに恋をした…ような錯覚に陥った。

 SLが毎日運行されることで有名な大井川鐵道は4両のSLを所有している。同社の山本豊福広報課長によると、けん引車は「当日のお楽しみ」だそうで、お目当ての車両に会えるかは運次第。

 この日の客車は4両編成。国鉄時代に活躍した旧型客車「オハフ」とともに連結された「ナロ801」が、おでん列車の宴会会場だ。80年に登場した車両には、83年に畳が敷かれ、長机と座椅子が並ぶ。定員30人分のお弁当が置かれ、後方の調理スペースでは、寸前まで火にかけられていたおでんをエプロン姿のおばちゃんが盛りつけ始めていた。

 定刻になり、C11が汽笛を響かせると出発。それと同時に、アツアツのおでんと熱燗が配られ始める。ゆっくりと左右に揺れながら走りだすと、沿線に集まった多くの人が手を振って見送っていた。

 目の前に置かれたおでんを早速食べようとすると、同じ机を囲んでいた撮り鉄グループのメンバーから「マジックパウダーをかけて」とアドバイス。静岡おでんといえば、濃い味付けが特徴だ。さらに、魚の骨などを細かくしただし粉をふんだんに振りかけていただくのだそう。何とも新鮮で、味わい深い。また、SLの余剰蒸気を利用した蒸気暖房もこの時季ならではで、おかげで体はポカポカになった。

 おでんと熱燗だけでも至福だが、実は飲食物の持ち込みは自由。名古屋から来たという男性は、刺し身を持参。買ってきたビールで一献傾ける男性もいた。ばく進するSLに引っ張られるお座敷車で、好物を味わう。なんて幸せな時間だろう。

 「皆さんは昼間からお酒が飲めていいですねぇ」。突然の声に振り向くと、そこにいたのは“名物”のSLおじさん。車掌として乗務する傍ら、SLや大井川の豆知識を独特の口調で披露して歩き回るのだ。この日が誕生日という乗客にサプライズのプレゼントも。和やかな雰囲気に包まれた。

 心地よい揺れの中で手を振る人が絶えない車窓を眺め、たくさん笑った1時間20分。あっという間に終点の千頭駅に到着した。名残惜しく「ナロ」から降りると、早くもSLの前には記念写真を撮ろうとする行列が。また、転車台へ向かう人の姿も。多くのファンに囲まれたSLが、より一層たくましく見えた。

 ◆アクセス 関西からは新幹線で掛川から東海道本線に乗り換え。JR金谷に隣接する大井川鐵道金谷から一駅、およそ3分でSLが運行する新金谷に到着する。

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