28番といえば名古屋の鰻

 力強く投げ込む今朝丸(撮影・西田忠信)
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 【7月15日】

 阪神の背番号28といえば?

 そりゃ江夏豊だろう。ほとんどのプロ野球ファンはきっとそう答える。球史を紐解いてもそこは動かない。ただ、僕が知る「28番」といえば…

 中田良弘、福原忍らであり、残念ながら、江夏の現役時代をセピア色のフィルムでしか知らない。昭和を彩った江夏の功績を見れば、言うまでもなく「怪物ぶり」がうかがえる。かつて金本知憲が「あの人は別格」と言ったくらいだから、ここで語るのも畏れ多いのだけど、評論家時代はフランクに接していただき、お世話になった。遠征でご一緒する機会も多かったが、特にここ名古屋でのランチは思い出深い。

 「うなぎ、いくぞ」

 決まって栄のひつまぶし店で試合前の時間を愉しませてもらった。行きつけの老舗で野球談議に花を咲かせたレジェンドだけど、僕のリアクションは「へぇ」「ほぉ~」の連発だった。

 「キャンプで審判がよくブルペンに来るだろう?オレはキャンプが始まってからしばらくの間は、キャッチャーの後ろに審判を立たせなかったんだ」

 なぜか。制球が定まるまでに球筋を見られると、「江夏はコントロールが悪い」という印象、先入観を持たれる…それが嫌だったそうだ。今の時代?もちろん、そんな投手はいない。

 阪神の背番号28といえば?

 そりゃ今朝丸裕喜だろう-。いや、まだそうは言われない。けれど、いつかファンに認められるための勉強代。この夜のマウンドをそう捉えたい。

 高卒2年目、「28番」の記念すべきプロ初先発は4回4失点だった。立ち上がりは先頭岡林勇希から三振を奪うなど上々だったが、四回に捕まった。ボスラーに浴びた2ランは3-2から抜けたフォークボール、打ちごろの半速球を右翼席へ運ばれてしまった。

 「カウント不利で変化球を抜いて投げたら、ファームのレベルであれば、外野フライ、もしくは、タイミングを崩されるであろうけど、このレベルではスタンドまでもっていかれる」 

 被弾の場面について指揮官の藤川球児は今朝丸の悔恨を思いやりつつ、そう語った。

 振り返れば、今朝丸の「1軍デビュー」は今年2月だった。沖縄で日本ハムとのオープン戦で1軍初マウンドにあがって好投。連日審判の立つブルペンで制球の良さを見せて掴んだ初舞台を「一番いい経験になった」と語っていた。が、あの試合後、球児は「レギュラーシーズンとは違いますからプロ野球は…」と、ほほ笑んでいたことが印象深い。その通り。たとえそれが最下位相手でも1球の「抜け」を許してもらえない、そんな世界だ。

 試合前に買った地元紙に「うなぎ、1割安」の見出しが躍っていた。値下げの理由は昨年豊漁だった稚魚が成長し、今年流通しているからだそうだ。うなぎといえば江夏とのランチ、その思い出を懐かしみながら後継を思う。「28番」はまだ2年目の稚魚かもしれないけれど、未来を豊かにするため、この夜の悔しさを「一番いい経験」に差し替えればいい。=敬称略=

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