雨男と満塁男のマインド

 【5月17日】

 あの子、雨オンナやねん…。屋外のイベントがあるたびに、そんなふうに揶揄される女性がいる。この日の甲子園もそんな会話があちこちで聞こえてきそうな空模様だった。

 「雨女」という言葉が日本で最初に登場するのは江戸時代である。鳥山石燕(とりやま・せきえん)の妖怪画集に描かれたもの…つまり「妖怪」。

 一方で、干ばつの世に雨を降らせてくれる「雨神」。そうともいわれるなど、諸説ある。解釈は時代とともに移り変わり、次第に現代の「雨女」に落ち着いたようだけど、つまり「雨男」という呼び名は「雨女」が起源になっているのだ。いずれにしても、そう呼ばれて「うれしい」と言う人はあまりいないように思う。

 妖怪か。神か。

 この日、甲子園に雨を降らせた男は連敗を止める「神」になった。

 「雨で投げにくいなって思ったらそうなるっていうか…。雨の日は自分の日だと思って『待ってました』じゃないですけど、そういうメンタルでやった方が絶対プラスなんで…」

 前日、虎番にそんなふうに語った左腕は「雨男上等」のコメントを発していた。だから…なのか、朝の強雨がウソのように試合前に曇り空に…。これぞ「神」になるべくマインドの勝利。そう書いてもいいかもしれない。

 実は、その男からこんな例え話を聞いたことがある。

 「ゴルフでも池に入れないようにしようと思って打ったら、入ってしまうじゃないですか」

 確かに、あれは不思議…。

 「ですよね。悪い方のイメージを湧かしちゃうと、そっちに体が動いちゃうんですよ。だから『○○しないように』という思考をやめて、できるだけ『○○したい』というふうに持っていくようにしています」

 また雨かよ…そう落胆するのか。

 やったぜ雨だ…とほくそ笑むのか。

 降雨ウエルカムの「雨男」が手を叩いて喜んだのはスコアレスの四回だ。

 「満塁男」が満塁でなくとも値千金の先制打を放った。2死、走者一、三塁の戦況でカープ床田寛樹のツーシームをセンターへ運んだ。追い込まれながら難しい軌道のボールに見事対応した…こう書けば、阪神ファンであれば名を記さなくとも分かる。

 晴れ男、夏男、お祭り男、そして、満塁男…それらの呼称を嫌がる者はいない。自分はチャンスに強いんだ!そんなマインドだから打てる。周りの者が「お前はダメ」だと烙印を押さないこと。「できる」と背中を押せば成功率は上がる。そんなマインドは心理学的に証明されているものだし、指揮官藤川球児の指針もそうだ。

 「ピッチングでもそう。真ん中に入ったらホームランになっちゃうから、真ん中に入らないように投げようと思ったら入っちゃうんですよ。『しないように』という考え方をできるだけしないこと。こうなりたいっていうイメージで持っていくようにしています」 雨男は幸せを呼ぶ神…そんな大竹耕太郎のマインドに天晴れ。=敬称略=

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