同郷自慢の最強左腕に
【4月20日】
Mrs.GREEN APPLEの『私は最強』を口ずさんでいたのは、バッテリコーチ野村克則である。試合前のことだ。こんなときだからこそ、テンション上げていこう…。
そんなふうに見えた。といっても熱唱とまでは…。練習中に流れた同楽曲にこちらもリズムを合わせていた。だから、克則のノリがうれしかった。
連敗中に暗い顔しても何もいいことはない。人間って危機に面したり、利害関係がおぼつかなくなると、本性が出るといわれる。ブスっとしたり、目を合わさなかったり…。仏頂面して物事が好転するエビデンスはない。
木浪聖也は笑顔だった。練習から試合中もずっと。前を見据え、覇気に満ちていた。代わって遊撃を守った小幡竜平も実に清清しく練習に取り組んでいた。この両者こそ最強の同志であり、誇れるライバル関係だと感じる。
さて、藤川球児はどうだったか。
八回にベンチを飛び出した。坂本誠志郎への危険球をめぐり、選手を守る心が自然と出た…記者席からはそんなふうに見えた。戦前からイライラが募っていたのか。そうではないように思う。試合前に僕は指揮官の動きを目で追った。普段とは練習を見やるポジションを変えていた。一塁アルプス席と内野席の区切り目。そのラバーに身をあずけ、ジッと選手を見守った。泰然自若。そう映ったし、最強で平らな心がチームを落ち着かせる…そんな周波に乗ったのがルーキーだった。
Mrs.GREEN APPLEの『StaRt』の登場曲でまっさらなマウンドにあがった伊原陵人は登板最終イニングとなった五回。2死から二俣翔一を追い込むと、坂本誠志郎のサインに7度首を振った。最後はスライダーで一飛。最強の1球を選んだのだろう。先発ローテを担うべき、威風堂々「StaRt」を切ったのだ。
親子ゲームだったこの3連戦。せっかくだから僕も尼崎のSGLを少し覗いてから甲子園へ戻ってきた。カープの最強時代、16年からの3連覇を丸々経験した面々がファームにいるので、あらためて聞きたくなった。単刀直入に、なぜ3年続けて優勝できたのか。
「それぞれの年にうれしい想定外があったからだと思いますよ」
旧知のカープ関係者はそう語った。 16年=野村祐輔(前年5勝8敗の右腕が16勝3敗)
17年=薮田和樹(前年中継ぎだった右腕が序盤に先発転向し15勝3敗)。
18年=G・フランスア(育成契約のドミニカンが5月に支配下登録されると、中継ぎで47試合登板のフル回転)
前年1勝の森翔平がここまで3勝。
春風の穏やかな日曜日、そんな好調左腕に土をつけたのは佐藤輝明の最強弾だ。2発かっ飛ばして岡本和真とのキング争いが熱い…でも、きょうはこっちのうれしい想定外を期待したい。 球児から「背番号くらい勝てる投手になってもらいたい」と激励される潜在性だから2ケタ勝っても想定内か。いずれにしても、やったぜ伊原。僕も奈良出身だからヨロ…ってシメは最強…いや、同郷自慢かい。=敬称略=
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