「驚安の殿堂」に学ぶこと

 【3月29日】

 馴染みのつけ麺屋で日経新聞を読みながら腹ごしらえ…広島出張お決まりのお昼だ。デーゲームだからせわしないが、注文を済ませ、文化面から流し読みしてビジネス面でストップした。

 目がいったのは「ドン・キホーテ社長、6年ぶり交代」の見出しである。記事によれば、若返りをはかった同社の新しい最高経営責任者は00年入社の47歳だという。1977年生まれ??新井貴浩といっしょじゃないか。 

 それはそうと、なぜ「ドンキ」が気になったかといえば、実は先月、同社の創始者のご子息とお会いする機会があったからだ。縁あって様々な分野の経営陣が会した宴席に誘ってもらったのだが、皆さん発想が豊かで、中でもそのご子息が宴を盛り上げてくださり大いに楽しませてもらった。 

 経営論を学ぼう。記者職にたまらんほどやり甲斐を感じつつ、10年ほど前からそんな思いで日経紙を購読し、実業家、企業家との交流を大切にしてきた。いや、僕のライフスタイルはどうでもいいんだけど、先月の食事会での「学び」をひとつ。

 「すべては、人をその気にさせられるかどうか。人は気持ち次第ですよ」

 ちょっとここでは名前を出せないのだが、ある業界のドンがその会でリーダー論を僕に語ってくれた。

 プロ野球もそうだ。

 リーダーがいかに選手をその気にさせるか。個々のメンタリティーを尊ぶ指導者なら組織は上向く。

 さて、開幕2連勝の中で工藤泰成のプロ初登板はほろ苦いものになった。1イニングもたず、押し出しを含む3連続四球で降板したかっこうだが、潜在性ピカイチの成否を分かつのは気持ちの整えようだと思う。サプライズの支配下発表を行うなど、藤川球児のマネジメントが「その気」にさせたプロ野球人生だけど、この先も球児流で軌道に乗るはず…そんなことを考えながら試合後の取材エリアに足を運ぶと、虎番に囲まれる工藤に指揮官が声を掛けていた。

 「工藤、前向きに話しておけよ。全然、大丈夫」

 さすがである。

 そのあたりのマネジメントでいえばそれこそ「驚安の殿堂」で大成功したドン・キホーテの創始者、安田隆夫の組織論を読んだことがある。

 「どんな人であっても、他人から指示されるより、お願いと感謝を述べられた方が、その気になるじゃないですか。人をその気にさせる力の方がよっぽど組織に与える影響は大きいです」

(雑誌『財界』=財界研究所出版)

 球児の何気ないその励ましがルーキーを救う。やわらいだ工藤の面持ちを見ればそれがよく分かった。

 「緊張してたんじゃないかな。初登板だし、この球場の雰囲気だし…。でも、いい経験じゃないですか。これからどんどんやらなきゃいけないピッチャーなんだから」

 バッテリーコーチ野村克則も工藤の背中を押すようにそう話していた。指導者たちが若い力を下支えする。その認識が豊かな政権は強い。=敬称略=

関連ニュース

編集者のオススメ記事

吉田風取材ノート最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング(阪神タイガース)

    話題の写真ランキング

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス