あすの育成会議で出る名前

 【2月13日】

 明日のキャンプ休日、沖縄のファーム宿舎で阪神の育成会議が行われる。テーブルにつくのは球団本部長の嶌村聡ら幹部、スカウト、そして、ファームスタッフ、同トレーナー陣である。

 何も今年に限ったことではない。毎年、2月のそれはファームのキャンプ地で開催されるため、一昨年まで高知安芸に前述の関係者が集っていた。議題は文字通り、「育成」にまつわる事案。ルーキーを中心に強化指定選手の体調、進展、潜在性など「現在地」を共有し、彼らへの指導、起用にまつわるチーム方針を再確認する。

 野手なら、例えば山田脩也。次代の大型ショートとして期待される彼だけど、仙台育英時代は投手としても144キロをマークするなど「二刀流」の才能を称えられた逸材だ。ゆえに一年目のキャンプは高校時代に疲労した肩を気遣い練習を積ませる。具体的には守備練習の送球制限。ノックは受ける数をこなしながら投げる数はオーバーワークを避けるよう指導者が見計らう。

 これら育成プログラムは、僕ら取材者が何気なくグラウンドを見ているだけでは気付かない。ドラフト1位・下村海翔、また、育成ドラフト2位・福島圭音へのそれもしかりである。

 「指導」は「ルーキーは触らない」ことが約束事といわれる。秀でた力、ストロングに魅力を見いだし指名した選手だから、まずは「見ること」が基本方針。仮に打撃や投球のカタチがどれだけ変則であっても、コーチの一存で改造を促すことはない。この指導スタンスが近年の阪神に浸透している。

 そのような視点でキャンプを見るとおもしろい。半日ほどグラウンドやブルペンを注視しても、外からでは分からないことが多いけれど、一方で、選手の内面が見える日もある。

 この日、取材したファームキャンプで注目したのは大卒3年目の鈴木勇斗だ。ご存じ、21年ドラフトの2位入団左腕(同年は1位=森木大智。3位=桐敷拓馬。4位=前川右京)。

 鈴木は朝から少し元気がないように映った。サブグラウンドの投手ノックで一塁へ悪送球すると、仲間から愛あるゲキが飛んだ。「おい、まだ、きのうのこと引きずってんのか~」。

 「きのう」…つまり12日の紅白戦。2番手で登板した鈴木は先頭の糸原健斗から3者連続四球で無死満塁のピンチを招き、2イニング目も先頭ヨハン・ミエセスに四球…。初実戦で結果を出せなかった。振り返れば、鈴木がルーキー時代の22年春。1軍キャンプのシート打撃登板で3者連続四球。彼は悔しがり、ベンチで目頭を押さえていた。あれから2年。第2クールにファーム視察した岡田彰布、そして球団SAの藤川球児が鈴木の成長を褒めていた。紅白戦の後だって指揮官は「まだまだチャンスある」と話していた。

 もう強化指定を外れている23歳だけど、だからといって球団が目を掛けなくなることは当然ない。取材の限り、鈴木は「体が強い」と聞く。練習に耐える体力は立派なストロング。輝ける道を探し、虎将のお眼鏡にかなうワンピースになってほしい。=敬称略=

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