花を咲かせる3年目
【10月25日】
雑誌と新聞の違いって何ですか?と聞かれれば、当然だけど、まず週刊(月刊)と日刊の違いだと答える。毎日発刊する僕らと異なり、雑誌の編集者が苦労するのは今年のプロ野球かもしれない。
明日どうなるか分からない今秋のセ・パである。例年なら大方予想のつく最終盤で両リーグとも首位争いが混沌とすれば、雑誌社は予め祝いの原稿を書きづらい。
書くなら決め打ちか、希望的観測か。今週、書店やコンビニに並ぶ雑誌のプロ野球連載や特集面は軒並み「ヤクルト快進撃」…なかには「ヤクルトV」の予祝を決め込んだネタが掲載されている。
無理もない。第4コーナーから燕の加速はえげつなかった。整えられた投手力と元来の強力な打撃陣で嵩(かさ)に懸かるその強さは、神がかっていた。だから、こんな類も…。
野球解説者の真中満氏に、ひと足早く「勝因」を分析してもらった-。
これは「週刊ベースボール」最新号の記事だが、「勝因」と題するのだから、いうまでもなく優勝前提の原稿だ。前回ヤクルト優勝時の監督が高津スワローズの強さを解説しているわけだけど、専門誌以外でも、今週号の「週刊ポスト」は「快進撃・高津監督が野村監督から教わったこと」と題し、高津臣吾の〈監督力〉を川崎憲次郎や飯田哲也ら、ヤクルトの名だたるOBたちが絶賛している。
なるほど…と一通り読ませてもらったけれど、ひるがえって「阪神優勝」を前提に阪神OBが矢野燿大を絶賛する記事は、今週どの雑誌を探しても見当たらない。
今夏、在阪局が「阪神優勝してまう」なる番組を放送し、虎党が悲鳴をあげていたが、それは、かつて阪神進撃を〈予祝〉するメディアが一足早く優勝特集を組んだもののV逸…忘れたい黒歴史があるためだ。だから、ここへきて先走る(?)ヤクルトのV企画はひょっとして…なんてポジティブな妄想を膨らませてみたり。
この日、阪神球団からの発表で12月に神宮球場で「野村克也をしのぶ会」が開催されることが分かった。かつてノムさんが在籍した球団が共同発起人となり執り行うそうだ。今冬、優勝監督として供花するのは果たして誰か。
「○○は選手から人気がある。私の教え子では珍しく(笑)、人間性がいいのだろう(中略)二軍監督からスタートしたという経歴は非常にいいと思う」
前述した「週刊ポスト」の特集によれば、これは生前の野村克也が同誌のインタビューに答えたもの。○○には「高津」が入るのだが、教え子という関係性でいえば「矢野」を当てはめたくもなる。
〈予祝〉とは矢野のあり方でもあるけれど、ノムさんのそれにあたるものを述懐してみると…。
「1年目に種をまき、2年目に水をやり、3年目には花を咲かせます」
これに照らせば、高津はまだ水をまき、矢野が花を咲かせる番。そう信じ、劇的なゴールシーンを待つことにする。=敬称略=