Vロードの主役は悠輔で…

 【6月18日】

 「勝ち方」にこだわりたかった伝統の一戦である。どうにかこうにかではなく、大勝したかった。なぜって相手が相手だから。Gの戦意を削ぐ意味でも、リーグ戦再開の直接対決で圧倒したかった。

 だから、注目したのは3-0で迎えた三回の攻撃。3番からの打順でどれだけ破壊力を見せつけられるか。そんなふうに見ていたので、J・サンズの満塁弾を呼び込んだ4番の口火打は貴重だった。

 この夜は〈引き立て役〉になったけれど、当欄はこれからも変わらず、Vロードの主役=大山悠輔にフォーカスしていきたい。

 メディアの端くれがあらたまって書くのも何だけど、僕は阪神に感謝している。大山を獲ってくれてありがとう、と。阪神らしい4番といえば、どう聞こえるか分からないけれど、僕の肌感では、理屈抜きで「阪神らしい」のでしょうがない。とにかく、あの5年前のドラフトで大山という「宝物」を、関西へ、甲子園へ導いてくれた運命に感謝している。

 昨日の続きである。

 5年前に5年後を予知できる者はいないわけで、そういう意味であのドラフトはこれから先も語り継がれるはずだ。

 16年の秋、当時、僕は〈誤報〉をデイリースポーツに載せてしまった。ドラフト前夜に執筆した1面=阪神1位・佐々木千隼がそれだ。ドラフト会議当日の売店には佐々木1面のデイリースポーツ本紙が並んでいた。

 よし、よし、あとは金本知憲が佐々木を引き当てるだけ。そう思っていた僕の顔が真っ青になったのは、ドラフト直前だった。「サプライズでいくわ」。金本は会場へ入る前、笑顔でそう言った。

 「私も当日まで佐々木千隼投手でいくと思っていました」

 時の阪神オーナー坂井信也は回想する。グランドプリンスホテル新高輪で編成(スカウト)会議に出席していた球団社長・南信男から坂井のもとへ電話があったのはドラフト当日の午前だった。佐々木(現ロッテ)を推す声と田中正義(現ソフトバンク)を推す声で二分され、まだ迷っている。そんな話だった。それでも、金本が佐々木推しであることを知っていた坂井は、1位指名は佐々木で落ち着くとにらんでいた。

 ところが事態は一変する。

 再び南から坂井へ電話があったのはドラフト会議本番が迫る午後のこと。「大山でいきます」。

 直前のどんでん返しだったが、総帥は「そうか」とうなずいた。

 一年前から大山に魅力を感じていた坂井はスカウトを統括する佐野仙好にあらかじめ、そのポテンシャルを確認していた。

 「打てるし、守りもいい。田中正義のまっすぐも打った。いけますよ、と。佐野さんにそう言われていたことがずっと頭にありました。ですから、金本さんが『大山でいきたい』と決断されたときは私は大賛成。あれは本当に金本さんの英断です」

 金本は大山を欲した。しかし、どうやら2位では残っていない。直前で確かな情報が入り、それなら…。続きは次回。=敬称略=

関連ニュース

編集者のオススメ記事

吉田風取材ノート最新ニュース

もっとみる

    スコア速報

    主要ニュース

    ランキング(阪神タイガース)

    話題の写真ランキング

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス