しびれた!954勝目

 【5月13日】

 あす伝統の一戦は節目の2000試合を迎える。巨人との通算対戦成績を先だって当欄で書いたけれど、「わざわざ、そんなん載せんでええわ」と、イヤな顔をした阪神ファンもいたかもしれない。

 それでも矢野燿大は巨人に大きく負け越す歴史に目を背けることなく、「意識して戦う」と公言してきた。20年ほど阪神を取材する中で、巨人は好敵手というより、「嫌なやつ」であり続けた。もう巨人だけは…そう辟易するシーズンもあったけれど、僕の世代で巨人と双璧の「嫌なやつ」を挙げれば、間違いなく中日である。

 この夜、阪神が中日との2001試合目を迎えるにあたり、デイリースポーツの記録部にいろいろ調べてもらった。長い球史において、中日との相性ってどう?

 「2000試合で阪神の953勝1001敗46分けです」

 ナゴヤドームで勝てない…だけでなく、ナゴヤ球場でも負け越しの数がなかなか多かったことは先日書いた。では、甲子園では?

 「前回優勝した05年からでいえば、昨年まで16年間で阪神の勝ち越しは7度。負け越しも7度。残りは5分です」

 ホーム甲子園でもやはり中日に苦労する数字が残るのだ。

 「とにかく、相手が嫌がることをやってくるチームだよな。例えば…走塁一つでやられた試合が年に何度あったか」

 金本知憲は現役時代、中日戦についてそんなふうに語っていた。

 今シーズン3勝3敗1分けで迎えた虎竜の8戦目。三塁ベンチ、そして竜党は、いまの阪神をどう見ただろう。こりゃ「嫌なやつ」だと感じてくれただろうか。

 金本が虎で4番を担った時代、井端、荒木、福留らがそうだったように、いまの矢野阪神には中日にとって「嫌なやつ」が名を連ねる。「走」だけで億を稼ぐ…そんなレベルも夢ではない神足の熊谷敬宥。値千金の選球…代打の切り札、原口文仁。ここぞの得点圏で輝く近本光司の打棒。書きたいことが山ほどある中日戦954勝目だけど、誰か一人といわれれば、僕は秋山拓巳を書きたい。

 しびれる七回の同点劇を生んだのは、その直前。秋山-梅野隆太郎のバッテリーが七回無死一、二塁のピンチで木下拓哉を封じたからこそだ。木下はリーグ最高の盗塁阻止率しかり、リードしかり、梅野のライバルになりうる捕手だけど、特筆は、阪神にとって最も「嫌なやつ」であること。

 というのも、そう。木下の対戦チーム別打率を見てみると、阪神戦の得点圏打率がこの試合まで・571と飛び抜けていた(ちなみに対巨人のそれは・167)。走者を置いてこの男だけは…そう思っていたので、二回2死からの先制被弾は確かに痛かったけれど、最小限の被害で○。走者を2人背負った七回に、被弾したフォークを再び決め球に選び、制球を誤ることなく木下を抑えたことで勝機が生まれた。僕はそう思う。

 「嫌なやつ」を凌駕した夜…竜にダメージを与えた今年のベストゲームだと思う。=敬称略=

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