私ならできる!の心
【9月16日】
寺田千代乃という経営者をご存じだろうか。僕は中学時代この女性の次男坊とクラスメートで、よくお家へ遊びに行った。次男坊は鉄道模型が好きで、彼の誕生日にNゲージを贈ったこともある。
「社員11人、トラック12台で引っ越し専業の仕事を始めた時から自分たちは運送業ではなく、サービス業だと思ってきた」
アートコーポレーション名誉会長の寺田が今月1日から日経新聞のひと月連載「私の履歴書」を執筆している。社長を退いた昨冬まで激動のキャリアを一人称で綴るのだが、僕にとっては昔なじみの友人のおかあちゃん…80年代当時の記憶を辿りながら読んでみるとへぇ、そうだったのか…と、創業者の苦労を噛みしめられる。
長らくドラえもんをイメージキャラクターに「起用」してきたアート引越センターは、寺田社長のアイデアが当たりまくり、トップランナーへ成長したわけだけど、「履歴書」で彼女の理念を読み進めると、成功の足跡に頷ける。
日経に綴られた言葉で、当方の胸に響いたものを記しておく。
「順風満帆ではなく、何度も危機に直面した。くじけそうになった時は『私ならできる』と自分に言い聞かせた」-。
ちなみに世間は狭いもので、金本知憲と寺田は面識がある。いつだったか「中学のとき寺田さんの息子さんと…」と伝えると、金本は驚いていた。余談だけれど。
その金本は、何度も危機に直面し、志半ばで監督の職を辞した。果たして矢野燿大の心はどうか。
飛車角落ちのGに敗れ、これで東京ドームで開幕から8連敗。これだけ巨人を意識して、それでも勝てなければ、誰だってくじけそうになる。そんな危機でも「俺ならできる」と、まだまだ自分に言い聞かせられるかどうか。
矢野が扇の要だった03年の星野阪神は開幕から76試合目でマジック「49」を灯した。これが長らくセ・リーグ最速だったわけだけどこの記録を20年の原巨人にあっさり塗り替えられてしまった。これ地味にショックなんですけど…。
だってあの強さ、虎党の誇りだったりしない?17年も前の話だから気にしない?いや、Gの最速マジックに最も〈貢献〉している虎だから、気にしなきゃいけない。
あらためて書くけれど、今年のセ・リーグはCSがない。優勝チームが固まった瞬間、残りは消化ゲームと化すわけだから、何とかこの夜のような粘り腰、そして意地を最後まで見せてほしい。
阿部慎之助ヘッド代行が一塁ベンチに仁王立ちしたこの夜だ。2軍監督のもと鍛えられた小麦色のヤングGがこれでもかと暴れたのだから、G党はビールが旨い。
誰かを喜ばせる-監督・矢野が就任以来掲げる理念である。いま阪神ファンを喜ばせる最たるものは何か。そりゃ勝つことだけど、他には?僕は日焼けしたヤングTで見たい選手がいる。そういえばオリックスは背番号3桁の…あれは夢がある。俺ならできる!そんな気概の若い血をきっと阪神ファンは待ち望む。=敬称略=