僕の胸も打たれました

 【8月20日】

 太田プロの有名タレントMからLINEがあった。旧知の彼は愛情を込めて同プロダクションの後輩タレントをイジるのだ。

 「弟は巨人の1軍。スタメン。兄貴のあいつは4軍ですけど…」

 ロングアイランド??太田プロのお笑いコンビ?ごめんなさい。失礼ながら、存じあげず…。Mが「4軍」というのだから、そりゃ全国区じゃない。しかし、同コンビのツッコミ担当は、ジャイアンツの1軍選手、それも、今をときめく有望株を弟に持つのだ。

 1番、ライト、松原…。

 東京ドームのスタメン発表に場内は沸いた。

 そうか。ついに原辰徳は彼を1番に抜擢したか。

 このカード初戦にプロ初スタメンで高橋遥人からヒットを放ち、2戦目はマルチヒットでプロ初打点。そして3戦目のこの夜は、1番で初起用され、八回先頭で技あり打。これが勝負を決定づける2点目に繋がり…。

 4年目、育成枠出身の松原聖弥(まつばら・せいや)である。

 初めてづくしか…。松原にとって忘れられない伝統の一戦になるだろうけど、屈辱を味わったオッサン記者にとっては「松原」は忘れられない名前になる。

 松原!?虎に関係ない話やないか…いや、そうとも言えないから書いてみたりする。

 前述したタレントで実兄の松原侑潔(まつばら・ゆい)は大阪・桜宮高校野球部出身…つまり、矢野燿大の後輩にあたるわけだ。聞けば、昨年、ロングアイランドは矢野の阪神監督就任記念OB会で漫才を披露したのだとか…。

 「岩貞投手だけじゃない。僕の胸も打たれました」

 実はこの夜、松原の兄は東京ドームで今季初のナマ観戦。弟・聖弥のヒットを動画で貼り付け、虎党が笑えないツイートを…。僕だって笑えないんだけど、なんだか兄弟愛にジーンとしたりして。

 この3連戦で結果を残した松原聖弥は、原巨人の1番に定着するかもしれない。憎き巨人軍ながらエールを送りたくなるのは、泥まみれのキャリアゆえか。仙台育英時代はレギュラーどころかベンチにも入れず、悲願の甲子園はスタンド要員。首都大学リーグ二部の明星大を経て、育成ドラフト5巡目で入団した雑草の中の雑草なのだ。

 スタートは2軍じゃない。プロのキャリアを3軍からスタートした背番号009にとって、1軍は気が遠くなるような夢舞台だったはず。どうすれば原辰徳の目に留まるのか。大卒に時間の猶予などない。求められるのは「結果」のみ。よくぞここまで這い上がったものだ。叶うならば、大阪出身の彼の負けん気をねっこり取材してみたい。

 さて、松原兄の先輩である矢野の心はどうか。というか、矢野の目には、敵軍の背番号59はどのように映っただろう。取材規制がなければ、東京ドームの通路で矢野の足をとめて聞きたかった。あの松原のギラついた目をどう見たのか…。=敬称略=

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