どうすれば松井になれるか

 【8月19日】

 ブルワーズ戦で惜しくもノーノーを逃したツインズ前田健太を見ていて、ある投手を思い出した。

 「彼、マエケンみたいだよ」

 昨年、18歳にしてそんな評価を得た星稜時代の奥川恭伸である。

 セ・パスカウトの「奥川評」を取材すれば、何度か「マエケン」の名が挙がった。制球抜群の変化球を駆使し、小気味よく打者を手玉に取る。言われるまで結びつかなかったけれど、確かにそうか。

 現在ヤクルトでファーム調整する奥川について僕の知る情報はないに等しいけれど、あのポテンシャルを1軍の舞台で早く見てみたい気持ちは募る。

 奥川…そういえば、阪神も巨人も逃したんだよな。昨秋のドラフトで両軍とも星稜のエースを1位指名しながら、原辰徳、矢野燿大がクジ運に泣いた。阪神球団本部長・谷本修が「球界の宝」と表現したプラチナ右腕を伝統の一戦で見たかった-阪神に関わる取材者としてそんな思いがなくはない。個人的には、阪神=西純矢は喜ばしいので、原サンが奥川を引いていれば…(身勝手な妄想は燕党に怒られますが)。

 嗚呼、4安打か。菅野が完封した初戦の巨人打線より打っているじゃないか…なんて、くだらないジョークも言いたくなる夜だ。

 巨人に勝てない。時計の針をちょうど2カ月前に戻せるなら…。

 「たられば」をグジグジ言う人を見れば、ああはなりたくないと思うけれど、自分を顧みると、他人(ひと)のことは言えない。このコロナ禍さえなければ…。

 そうだ。まだ、夏の甲子園を楽しんでいる頃だ…。

 17日に閉幕した「甲子園高校野球交流試合」はもちろん楽しませてもらったけれど…昨年のきょう19年8月20日は、星稜が中京(岐阜)を下し、決勝へ駒を進めた日である。そのゲーム、奥川は8回2安打無失点で履正社戦へ備えたわけだけど、翌日のデイリースポーツで評論した山下智茂星稜高校名誉監督の言葉が忘れられない。

 「奥川君は星稜の歴史の中でナンバーワンですよ」

 かねて山下名誉監督は「素材としては奥川は松井より上」と語っていたので驚きはなかったけれどゴジラより上なのか…改めてそう思った。

 プロ野球選手になる。そこで一流になるためには…昔からそんなことをよく考える。山下先生はかつて星稜高校サッカー部時代の本田圭佑から尋ねられたそうだ。

 本田「どうすれば、僕は松井秀喜さんのようになれますか?」

 山下「人間性だよ」

 星稜監督の林和成は「奥川はテングにならない。松井さんと同じように常に謙虚」と語っていた。そして、山下総監督は「松井も奥川もそうでしたが、周りに影響されない強い心を持っている」-。 阪神は巨人に12年連続で勝ち越せていない。ここ数年、そのワケをずっと探している。両軍にそんなに戦力差があるのか。そんなに選手層に違いがあるのか。 

 周りに影響されない強い心…名将の言葉を思う。=敬称略=

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