「K字回復」は許さない

 【7月31日】

 V字回復困難-この日1面の見出しである。デイリースポーツではない。いや藤浪晋太郎一色だった関西スポーツ紙のそれでないことは、虎党ならご存じ。これ、日本経済新聞の1面…一番大きな見出しなのだ。

 日経によれば、転落からの急浮上が困難とされるのは世界の経済だ。新型ウイルスの感染拡大が世界経済に大きな傷痕を残している-と書き出し、米国務省発表のGDP前年比大幅減を捉まえ、コロナ感染と経済停止という複合危機は出口が見えないと続ける。

 日本のプロスポーツだってもちろん例外ではない。感染拡大が収まらない限り、プロ野球の観客増も実現できないし、収益のV字回復など望めるわけもなく…球団経営もタダゴトではなくなる(既にタダゴトではないが)。

 そんなコロナ禍で多くの企業と反転の右肩上がりを続けるのが、大手IT業界といわれる。コロナ禍は2波を想定して、2度落ちて2度上がる「W字回復」が世間の見立てとされてきた。それが今はGoogle、Apple、Facebook、Amazon.com…これら銀河系企業と苦境企業の対比をあらわし「K字回復」なるフレーズまで出てきている。

 K字…一方は右肩下がり。他方は右肩上がり。うまいこと…いやいや、こんなシナリオは感心すべき事象じゃない。

 さて、日経新聞のスポーツ面で藤浪のふの字も見出しになっていなかったのは残念だけど、阪神が日経でデッカい見出しをゲットするには、それこそ、こんなシナリオが要るのかも知れない。

 V字回復の虎。ついに首位-。

 最大借金8からV字の上昇でここまできたタイガースは神宮からオアシス甲子園へ帰ってきた。6月開幕だからシーズンの進捗がややこしいけれど、このDeNA戦が34試合(13カード)目である。

 虎のV字を支えているのは、やはりこれか。梅野隆太郎の先制3ランで今季のチーム本塁打が37本目だと聞いて思った。昨季ってどうだっけ?本紙記録部によれば19年は12カードを終えた時点で24本塁打。10本以上の増である。

 ちなみに、チーム打率を同条件で比較すると、19年=・241。20年=・250。盗塁数は19年=22、20年=26。いいじゃない。矢野阪神2年目のチャレンジが徐々に実を結んでいると信じたい。

 チャレンジといえば…「回し者か」といわれそうだけど、もういっちょ日経から。この日の紙面、三浦知良のコラム「サッカー人として」は「トライ」が主題だ。

 「怖いのは、いいトライができて好内容を続けていても、勝てないままだと『いいこと』だったものが悪いものへと転じかねないこと。『必ず良くなる』と信じて向き合っていたはずが『本当にこれでいいのか』と分からなくなっていく。していることは同じ『いいトライ』のはずなのに」-。

 虎はきっと「いいトライ」ができている。貯金を重ねるGはずっと右肩上がり。他は右肩下がり…そんな「K字回復」を許すべからず。月替わりに願う。=敬称略=

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