相模原球場の記憶

 【3月8日】

 非常事態なんてあまり書くなよ…プロ野球経営陣の胸中を聞けばそんな声があるに違いない。「非常-」の世論が膨らめば、「球場はやばい」「移動も危険」の風潮は広まり、通常営業が遠のく…。

 新型コロナウイルスの脅威が長引くほど、世間同様、我々新聞業界だって打撃を受ける。不安を煽るつもりはさらさらないけれど、得体の知れないものだから予測ができない…これが一番、ツラい。

 無観客試合もそうだけど、要らぬウイルスのせいで勝手が違うのは、「神頼み」も例外ではない。恒例のタイガース西宮神社参拝に選手の姿はなく、二拝二拍手一拝の礼は、藤原崇起オーナー、揚塩健治球団社長、矢野燿大監督の三者のみ。取材規制も徹底され、いつもなら境内に取材陣が溢れるところ、カメラは幹事社のみ…。

 そんなこんなで、甲子園は雨上がりの巨人戦である。スタンドに誰もいないTG戦。こんな〈非常事態〉は未経験…じゃなかった。

 オッサン記者にとって無観客の巨人戦は11年の春以来9年ぶり。あの年は東日本大震災によって開幕が2週間以上延期され、その間の実戦を無観客で開催。同年4月6日、観衆0のTG戦は神奈川・相模原球場で行われ、当方はその日のデイリー1面を執筆した。

 第1打席に快音…この日のジャスティン・ボーアも打ったけれど9年前のマット・マートンも打った。先発の内海哲也から相模原の外野へはじき返した弾道は今もよく覚えている。当時のマートンは来日2年目。年間214安打を放った前年の巧打は健在で、あの日も2安打1打点と奮闘!国難のさなか、紙面を賑わせてくれた。

 復興支援スローガン「がんばろう!日本」として戦った11年はTGともにVを逸したわけだけど、マートンは開幕戦初回先頭打者本塁打を放つなど活躍。彼が2年連続最多安打を記録するなんて、低評価だった初年度のキャンプで誰が予測できただろうか。

 「広角に打ち分ける巧打者とはいえ、ホームは東京ドームですから、20本塁打の可能性は十分あります。岡本の後ろで彼の存在感が光れば打線は活性化しますよ」

 これは本紙巨人担当によるヘラルド・パーラ評である。五回に代打出場し、青柳晃洋から右翼線へ打ったGの新助っ人は本番では5番を任されるのか。メジャー通算1312安打ながら大砲タイプではない-そんな触れ込みだけど、得体は知れない。G番は「3割20本打ちます」と鼻息が荒いが…。

 「年配の方から吉田さんあてに電話がありましたよ。『今年の外国人バッターの予想はまだでしょうか?書いてくださいね』と…」

 先日会社にあがると、総務部の女性から読者の依頼を預かった。いや、痛いところを突かれた…。確かに、毎年この時期エラそうに新外国人の評価を書いているのだけど、今年はサボっている。

 実は既に球団社長の揚塩健治から「今年の2人はどうです?」と聞かれ、返答させてもらった。キャンプ終盤のことだ。次回、書かせていただきます。=敬称略=

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