1キログラムが生命線の40歳
【1月16日】
早朝目が覚め、部屋のドアノブに掛かっていた沖縄タイムスを読んで唸った。同紙のコラム「大弦小弦」によれば、名護市が先日主催したミニボウリング大会には90代の出場者が50人もいたという。
さすが、長寿県。これぞ、やんばるのお国自慢…なんだけど、同コラムの筆者は、昨今沖縄の30歳~60代の健康悪化が深刻化していると嘆く。多量飲酒や脂肪分の多い食事に起因するそうだけど、確かに、僕も沖縄へ来る度、ついつい泡盛を深く…いや、オッサン記者の不摂生はどうでもいいか。
「あれっ、知らない人がいる」
宜野座村の野球場に着くなり、能見篤史から涼しくイジられた。
毎年恒例の沖縄自主トレにお邪魔している。滞在先で「長寿県の危機」を読んだからではないが、今年41歳になる能見に“長寿”の秘訣を聞いてみたくなった。
節制してるんじゃない?
「全然。何もしてないですよ」
この左腕、どこから眺めても、フォルムが若い。昔から体型がまるで変わっていないように映る。
「14番の歳はいくつだい?」
一年前の沖縄キャンプでP・ジョンソンが能見を指して尋ねたことがあった。チーム関係者が実年齢を伝えると、「冗談だろ…」。R・ドリスも「32歳くらい」と、ずっと思い込んでいたのだとか。
何を隠そう、当方もよく若く見られる。が、それは着衣が条件。「着痩せ」をテーマに服選びをしているので、ごまかしの若さである。でも能見はそうじゃない(比べたら怒られマス)。聞けば、一流寿命を延ばすべく、彼なりに体調維持の悩みがあるという。
「僕の場合、すぐ痩せてしまうので、食事では脂っこい物、揚げ物を先に取るようにしてるんですよ。野菜を先に取ると吸収を妨げるので積極的には野菜を食べないです。体重が80キロ、90キロあれば、1、2キロ減ってもどうってことないかもしれないですけど、75キロない人間が1キロ減ってしまうと、ボールの質がすごく変わるんです」
実は数年前の夏、カープのある主力野手の発言を新聞で読んでハッとしたことがあったそうだ。
「能見さん、少し痩せたんじゃないですか?」
その選手は「カープキラー」能見から千金打を放った後、「きょうは球質が軽かった」と言いたげなコメントを報道陣に語ったようだ。心当たりのあった当事者の左腕は、それまで以上に「1キロ」と真剣に向き合うようになった。
3~4キロ気にならない当方は朝から沖縄そばにラフテー、ブルーシールまで…。不摂生な腹をして聞くのもなんだけど、せっかく沖縄まで来たので、阪神最年長投手に〈核心〉を確かめておいた。
今年、年齢に抗いたい?
「辞めるとか、辞めたくないというよりも…いずれ導かれるものだと思っているので。それがいつになるか分からないですけど、あまりそこを気にしながらやることはないかな。この世界は自分を守るのも自分、責任を取るのも自分。足元をちゃんと見ておかないといけないですから」。=敬称略=