意外と作れない緊張感
【11月17日】
僕は後進の指導で今時ウケないアプローチをしていた。昨日、そんな話を書いた。今時の若い人は着いてこないよ…周囲から助言も貰ったけれど、後輩のご機嫌取りで紙面が良くなれば苦労しない。
そう思っていたので、嫌われてナンボのやり方を変えなかった。
時代が違うんだよ。後輩に煩く言わない先輩のあり方が◎だよ。そんな指摘もされたものだ。
この種の〈悩み〉を抱える僕の同世代は少なくない。プロ野球界しかりである。
このオフ、阪神そして他球団の情勢を眺めながら、個人的に残念な人事があった。
ヤクルトヘッドコーチ宮本慎也の退任である。
現役時代は宮本と面識がなかった当方だけど、今年、共通の知人を通じて面識をもち、球場で会えば話をするようになった。
有望な若手を一人前にしたい。その一心で時に鬼になった宮本である。僕の感性では、是非こんな上司に教育してもらいたい。でも今の時代は…という人も少なくないのだろう。
宮本は前回の評論家時代、各球団のキャンプ地を巡り、こんなことを執筆していた。
「いいキャンプを過ごしていると感じたのは、広島と阪神です」
金本阪神の時代だ。
今年そのワケを宮本に確かめてみると、こんな話をしてくれた。
「良い練習をしているかどうかというのは、緊張感があるかないかだと思う。緊張感というものは意外とつくれなかったりする。キャンプの練習って毎日のことなんでね。キャンプって、飛び抜けて変わっていることをやっている球団ってほぼ無いでしょ。そういうところで、選手達の意識が高く、かつ緊張感があるというのがベスト。結局、ゲームをやっていくうえで若い選手は緊張するだろうしましてや、優勝争いするゲームになれば、相当緊張する場面でプレーすることも出てくる。日ごろからどこまで緊張感のある練習ができるかが凄く大事。そういう意味で、タイガースはいい練習をしていると言ったんだけどね」
その通りだなと思った。
この日、安芸ではキャンプ最後の紅白戦が行われ、6イニングで両軍あわせ失策が5つも出た。
僕の捉え方はネガティブじゃない。きっと緊張感があったからこその失策。変な言い方かもしれないけれど、無失策で良かった…そんな記事が出るよりずっと良かったと思う。「102失策からのスタート」は容易いものではない。
「プロ野球選手は技術屋なんだよ。突きつめてやらないと、本物の技術は身につかないと思う。そこの区別はつけないといけない。体力面の練習というのは明るくやったほうがいいけど、技術練習は別。自分の中でそこの区別はつけているつもりだけどね」
宮本はそうも語っていた。
これもその通りだな、と…。
宮本とは実はもっと突っ込んだ話もした。それこそ、今の時代にウケない類である。近いうちに必ず書きたい。=敬称略=