東京Dで大山の笑顔を…

 【10月7日】

 プレーオフの大一番で大山悠輔がスターティングオーダーから外れた。CS第1、2戦での内容が伴わず、DeNA先発が変則右腕の平良拳太郎であることも重なって矢野燿大は決断したのだろう。

 結果がすべての世界だから仕方ないのかもしれない。が、やはり当方は寂しい限りである。なぜって彼はタイガースの4番だから…いや、19年度の4番を任された男だからと表現したほうがいいか。

 短期決戦は調子の良い順にオーダーを組むのが筋だ。シーズン終盤の流れで、三塁-遊撃の2ポジションを北條史也、木浪聖也と3人で争う構図だが、クライマックスで大山が漏れた格好である。

 ファイナルS進出を決めたチームの列に、報道陣に囲まれることのない大山がバスへ向かって歩いていた。僕は彼に聞いてみた。悔しいに違いない気持ちを。

 「スタメンで出られない悔しさはありましたけど…シーズンとは違って、本当に勝つか負けるか。自分の調子どうこうよりもいかにチームが勝つかどうかなので…。出られないなりの理由がありますから。悪いのは自分なので…」

 CSでハイアベレージの北條、木浪と比べ、確かに大山のそれは芳しくない。本人が一番、不甲斐なく感じている。

 「大山は3年目ですよね。数字を見ても、彼はよくやっていると思いますよ」。この夜、TBSの解説で横浜スタジアムの放送ブースに座っていた新井貴浩(本紙評論家)はそう語る。大山が今季残した14本塁打、76打点はいずれも阪神でトップ。新井は自身の3年目を思い起こし、同じ大卒、同じ右のスラッガーとして、大山の現状を〈評価〉するのだ。

 生え抜きの大砲-。阪神に限らず、是が非でも自前で育成したいピースである。猛虎で〈一流〉に育った大砲といえば、掛布雅之、田淵幸一…。いつまで昭和のレジェンドを懐かしむのか。同じリーグを見渡せば、巨人には岡本和真(もちろん坂本勇人も)、カープには鈴木誠也、ヤクルトには村上宗隆(もちろん山田哲人も)、そしてDeNAには筒香嘉智という生え抜きの大砲が育つ。

 「筒香は最初イースタン・リーグでズバ抜けた成績を残していました。でも、なかなか1軍では結果を出すことができませんでしたよね…。彼の才能からすれば、遅咲きと言えると思いますよ」

 DeNA、阪神両球団でプレーした山崎憲晴はそう語る。筒香の一期上でDeNAに入団した山崎は、5年目にしてようやく「3割20本」をクリアしたハマの主砲を「遅咲き」と表現するのだ。

 初の「開幕4番」でスタートした今年の大山だけど、1年間その座を守ることができず、8月半ばに6番降格した。それでも13度の勝利打点はチームトップである。

 「出たところで全力を尽くすだけだと…。でも、やっぱりスタメンで貢献するのが一番ですし、何とかしたい気持ちは強いです」

 大山はハマスタの薄暗い通路で僕にそう語った。東京ドームで彼の笑顔を待っている。=敬称略=

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