「九度山」を眺めて…

 【9月14日】

 きのう高野山へ上った話を書いた。ランディ・メッセンジャーの言葉を聞きたいので下山しよう…そう綴って、締めくくった。突然の引退。そこに至ったランディの思いを察しながら、西宮へ…。

 ケーブルで山を下り、極楽橋から南海電車のドンコウに揺られて橋本へ向かう。その途中、9つ目に「九度山」という駅がある。高野下の次駅だからまだ山の中。ホームの看板に標高94メートルとある。

 「くどやま」と読むそうだ。この町をGoogleで検索してみると、かつてヤクルトのエースとして活躍した尾花高夫の出身地とある。へぇ……でも、僕が知りたかったのは、その名の由来。九度って??温度では、ないよな…。

 その昔、高野山の開祖空海(弘法大師)の母が暮らしていたという慈尊院がこの地にあり。空海は月に9回も母親に会いに来ていたことから「九度」の名が付いた。そんな言い伝えがあるそうだ。

 月に9回といえば、およそ週に2回。デイリースポーツの社員が休む回数…なんてのは読者は関心ないだろうけれど、空海が〈週に2度〉も親孝行していた…って聞くと、「へぇ~」でしょ?

 日曜日に投げれば、次はその週の土曜、いや、金曜でもいいから投げてやるぜ!それがランディ・メッセンジャーという男だった。

 ナゴヤドームでノーヒットノーランを食らった日に、負け惜しみを言わせてもらおうか…。矢野燿大も語ったように、ノーノーで2敗するわけじゃない。ま、完封負けしたまでよ…。ナゴヤで虎の完封勝利といえば、金本政権1年目の16年に我がランディが成しているじゃないか。あれ、よく覚えているぞ。原口文仁と北條史也のソロ2発で、2-0の完勝。あれは気持ち良かったなぁ…。

 当方はかつて、そんなランディに失礼なことを書いた。

 5勝6敗、防御率4・93だったランディの阪神初年度を総括し、「球団は他の助っ人を探したほうがいい」とエラそうに提唱した。

 この筆が誤りだったことは今更述べるまでもないけれど、問題は〈書き逃げ〉していたこと。

 「申し訳なかった…」。ようやく謝罪したのは、今春の沖縄・宜野座キャンプ。ランディの言葉に救われた旨は2月に書いた。

 「ネガティブなことを書かれると、それが間違いであることを証明してやりたくなるんだ」-。

 当方はどんな深い穴を掘っても足りないほど、恥ずかしい。

 どうやら引退会見は今週中にありそうだけど、日本球界通算100勝まで残り2勝だった〈日本人〉にどんな言葉をかけようか。

 最多勝1度、最多奪三振2度。そして、完封勝利は実に10度。

 インセンティブがどうとか、そんな話はいい。あれだけのフル回転を厭わず、我がタイガースに尽くしてくれたランディの功績には誰が何といおうと、頭が下がる。

 さすがに月に9度はなかったけれど、週に2度の先発はよく覚えている。通算1606イニング…ランディの足跡はノーノーより、尊い。=敬称略=

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