甲子園もキャンプ中なのだ

 【2月26日】

 ホームシックにならんの?知人から冗談っぽく聞かれることがある。1カ月も沖縄にいれば我が家が恋しくもなる。若い頃は何でもなかったけれど、歳を重ねる毎にホテル住まいがキツくなり…。

 って、オッサンの泣き言を並べても退屈だから、この日のトピックスを書こう。ほらほら、宜野座の記者席に陣取る解説者さんのダメ出しがわんさか聞こえます。

 「あの一塁を守っている外国人は打たんぞ」「パッとしないな」「ナバーロの方がいい」等々-。

 新助っ人ジェフリー・マルテである。紅白戦で音無し…。結果はともかく、内容が悪いという。マルテが凡退する度、こっちを向いて笑う後輩もいる。そりゃ、そうか。僕が数日前の当欄で「マルテは失敗しない」と書いたばかりだから、ニヤニヤしているわけだ。

 プロ野球OBの目と僕の目。前者に分があるのは明らかだし、そこを競うつもりはないんだけど、泣き言は、まだ言いませんよ。だって、マット・マートンのときも当初の評価は散々だったので。

 マートンが沖縄キャンプ初の実戦で3打数無安打だったこと、記憶にある読者はいるだろうか。ちなみに2戦目も3の0。3戦目にようやく来日初安打…これもゴロで三遊間を割ったものの、会心ではなかった。デビューから3試合で9打数1安打、打率・111。あのセンターを守っている外国人打たんぞ…当時、宜野座でそんな類のコメントを何度も聞いた。

 「これからが大事なんよ。きのう電話で報告を受けて、今のところは順調らしいけど、3月に不可抗力なことも沢山出てくるしね。60点~70点かなという悪い年もあれば、100点満点の年もある。3月に帰ってみたら分かるんやけど、実は、昨年はあまり良い状態ではなかった。そういう年も過去に結構あるし、今年は少々雨降っても大丈夫という年もあるんよ」

 紅白戦の後、グラウンドを整備していた阪神園芸(甲子園施設部長)の金沢健児が教えてくれた。 これ、助っ人ではなく甲子園のハナシである。阪神キャンプ地の整備に携わって31年目。51歳になった金沢は今年も1月末に沖縄入りし、この日が30泊目だという。西宮に残る7人の園芸スタッフに甲子園のグラウンドキープを任せる2月。芝と黒土のコンディション、雨量の推移など、金沢のもとへ逐一報告が入ってくるそうだ。

 毎年1月、阪神園芸の仕事始めに〈掘り起こし〉を行う甲子園のグラウンド状態は、何もイベントを入れない2月の天候、そして、3月のオープン戦、センバツを経なければ、その年の〈仕上がり〉は「分からない」と金沢は言う。

 甲子園にとっても、2月はシーズンに備えるキャンプ。そして3月もキャンプは続く…。そんな理解でいいですか?と尋ねれば、金沢は「そうだね」と微笑む。

 助っ人の仕上がりだって分からない。9年前、マートンは本土へ帰って打った。オープン戦打率・354。2本塁打。マルテの診断?彼が甲子園の、あの匂いを目一杯かいでからでいい。=敬称略=

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