打つしかない野球

 【10月31日】

 こんなこと自慢げに書きたくないけれど、2月の胸騒ぎは的中してしまった。あのとき、KYを承知でこう書かせてもらった。

 あまのじゃくかもしれないが、僕は疑い深く見ている-。

 宜野座の空にアンビリーバブルなアーチが何度も架かった。デイリースポーツは新助っ人への賛歌で何度も1面をつくった。沖縄キャンプの主役が金本阪神をVへ導く。そう信じたかったからワッショイ、ワッショイと…。金本知憲が「この3年間で一番強い」と胸を張ったのも、ウィリン・ロサリオの爆発ありきだった。

 打率・238。へぇ。イメージほど高くないんだ。この数字はロサリオのものじゃない。

 この夜、ヤフオクドームで特大アーチを架けたアルフレド・デスパイネの18年アベレージである。四回、カープ野村祐輔の厳しい内角球を完壁に捉えた打球は左翼席中段まで飛んでいった。カープが1点差に追い上げたイニングだっただけに、2死無走者からの特大弾が与えるダメージは計り知れないものになったように思う。

 ホークスは福岡に戻ってデスパイネが2試合連続の本塁打。レギュラーシーズンの低打率はこの際どうでもいい。ここで欲しい。そこで打つから、助っ人なのだ。

 打率・242。なんだ、デスパイネよりいいじゃないか。そう、この数字がロサリオのものだ。規定打席に届いていないので、まったく比較にはならないが。

 まあ、そんな数字はどうでもいい。ここぞで打てなかったから、阪神は断を下した。この日、ロサリオが自由契約選手として公示された。阪神側に再契約の意思はなさそうだから、「本物」と期待された大物ドミニカンはたった1年で縦じまを脱ぐことになった。取材によれば、既に新外国人の選定へ詰めの段階に入っている。

 楽しみ?いや、傷つきたくないので期待は最小限にしておく。縁起でもないが、新助っ人がロサリオの二の舞になるようなら、矢野丸の船出は苦しくなってしまう。

 カープのコーチ陣、スタッフに今季の阪神の印象を聞いてみたところ、異口同音に言うのだ。

 「外国人次第だった」

 それ、素人でも言えそうな…。

 いえいえ、彼らの物言いにはもちろん根拠がある。「足を使える選手が少ないと、打つしかなくなるので、助っ人次第」。

 実は、今日本シリーズのカープはそれを強いられているのだ。

 ここまで4戦、自慢の快足陣がホークス甲斐拓也に100%盗塁を阻止されている。そうなれば、スタートを切れない。足でバッテリーに揺さぶりをかけられない状態に陥る。前夜の第3戦は空中戦になったが、この夜もカープの得点は鈴木誠也のソロ1発。だからこそ、このシリーズのカープの戦い方は参考になる。

 例えば、盗塁ゼロの攻撃で勝つ方法。カープには〈ここぞで〉1発のある和製大砲がいるが、阪神は劣る。助っ人依存しないシミュレーションで土台を築けば、ぬか喜びの傷は浅くなる。=敬称略=

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