非科学的な怨念…いや、執念

 【9月8日】

 金本知憲もよく知る鉄板焼店の大将が広島の繁華街でバーを始めたので、よく顔を出している。先週の広島出張ではそのバーで関係者の仲間数人と午前様…。話の流れで、一人が怖い話をしたものだから、みんな眠気がさめた。

 何でも同じ職場の人間のことが嫌いで嫌いで恨んでいるという。酒の席だから容赦がない。マスターが「そんなヤツ、放っておけ。時間の無駄」となだめても「いやそいつに生き霊を飛ばしている」と言ってきかない。物騒な…。まあ実は…いや、やめておこう。

 「恨まれるほどの人間はそのうち廃れるから」と、仲間の最年長者が語っていたが、そこで思い出したのが、今年2月に逝去した大物弁護士・西中務の言葉である。

 「非科学的だと思われるかもしれませんが、恨みを買ったために運が落ちてしまう人は多い」-。

 人の気持ちは「生き物」であるということだ。気持ちは生きる。それは分かるが、さすがに怨念の話は野球にそぐわない。そこで、どうか。雪辱、リベンジへの執念も時に非科学的なんだろうか…。 甲子園で面白いものを見させてもらった。菅野智之である。

 巨人の絶対エースは二回、キャリア初対戦の陽川尚将に先制弾を浴びた。お気づきの方も多かったと思うけれど、興味深かったのはこの後である。一発を許した打席で投じた3つの直球はすべて外角への140キロ台…それがどうだ。迎えた2度目の対戦は、配球はやはり外角ながら、4つの直球はすべて152キロ超にギアチェンジ。ここでも安打を許すと、3打席目は152キロ超の直球に加えて、いよいよ、ガチ度マックス。走者を2人置いていたものの、巨人5点リードの局面で、配球は内角へズバッズバ。結果(投ゴロ)は虎党にとって残念だったけれど、オッチャン記者は何だか嬉しかった。

 Gバッテリーの手探り感はあったけれど、それにしても、陽川は“初めまして”の菅野を間違いなく本気にさせたじゃないか…。

 そうそう、その陽川といえば、1週間前を思い出す。この日のアーチは左中間フェンス最上部で跳ねてスタンドインしたものだが、先週2日のDeNA戦では、同じような左翼への飛球が最上部で跳ねてグラウンドへ返ってきた(結果は三塁打)。それこそ非科学的だけど、「次こそ!」の熱い気持ち、執念が〈おそらく、1センチ〉飛距離を伸ばしたのである。

 熱い…といえば、最近は日本のテニス界がそうだ。錦織圭に大坂なおみ…。昔、少しだけテニス観戦にはまったことがあるのだが、当時のヒロイン、マルチナ・ナブラチロワが雑誌のインタビューでこんな話をしていたことがある。

 「『勝ち負けは重要ではない』と語った人は、おそらく皆負けている」-。共感、共感。この言葉今も響くことが…。仕事だって何だって、勝ち負けは重要である。

 陽川対菅野…今年、もう一回くらい対戦があるだろうか…。次は本気になった菅野渾身の内角球を仕留める陽川の執念…雪辱を楽しみに待ちたい。=敬称略=

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