輝星の掘った土じゃないけれど…

 【8月29日】

 ニューヨーク・マンハッタンのタイムズスクエアに3万匹超のミツバチが発生したという。テレビのニュース映像でチラッと見たけれど、恐ろしい大群だ。え~っとこの夜の甲子園の観衆が4万ちょっとでしょ。記者席から見る満員のスタンドはいつも壮観だけど、いやいや、そんな大量のハチが大都市の中心部に??日本じゃ想像できない絵だ。専門家の分析によると、なんでもニューヨークは35度近い猛暑日で、ハチさんが熱のこもった巣から街へ逃げてきたのだとか…。どんだけ、マイホームの居心地が悪かったのか??

 こちら、甲子園だっておそらくハチが嫌がるほどの残暑だった。1時間ごとの気温を調べてみると西宮の最高気温は、阪神が練習を開始した午後2時で34度。日差しが強烈で、グラウンドレベルの体感温度はもっと高かったと思う。でも、選手たちは避暑地へ飛んでいくわけにはいかないんだよな。

 愛しのマイホームのに、居心地が悪そうだ。ランディ・メッセンジャーである。5回で90球を要し6回8被安打で4失点。マウンドが重苦しいと思ったら、やはり、今年のメッセはホームで苦しんでいる。甲子園で2勝6敗。5月半ばから勝てず、これで5連敗。メッセにとって、甲子園のマウンドは、来日から40勝を積み上げたスイートホームであるはずなのに、こんな年もあるのか。

 甲子園のマウンドといえば、今夏の高校野球で印象的なシーンがあった。話題を独占した金足農の吉田輝星が決勝戦の後「マウンドの土」を持ち帰ったことだ。僕らがよく見る「敗戦の球児」が集める土はベンチ前のものだけど、輝星は違った。当たり前だけど、ファイナルの後はもう試合がない。だからあの日、阪神園芸の甲子園施設部長・金沢健児は輝星に言ったそうだ。「マウンドの土、よかったら、持って帰っていいよ」。

 運気の強そうな輝星が掘ったからマウンドも潮目が変わって…なんて書くと誤報になる。ご存じの読者もいらっしゃると思う。甲子園のマウンドは高校野球とプロ野球で土の質が違うことを。高校野球が終われば、マウンドの土は丸々プロ用に入れ替えられる-僕は阪神園芸の方から聞いて知った。

 だから、輝星の掘った土はメッセの立つそれではない。金沢はいう。「90年代まではプロと高校野球でそんなに(土の質は)変わらなかった。ガラッと変えたのは03年かな。ジェフ・ウィリアムスから『少し硬くしてほしい』と頼まれて。さらに硬くしたのはメッセのリクエスト。15年からだね」。

 メジャー仕様に比べてまだ少し柔らかめだったマウンドを「メッセ好み」に仕立てたのが現在。だから、メッセにとってここは心地の良いお家。なぜ、勝てない?  試合後の囲み会見ではちょっと聞ける類じゃないので、これは僕の見立てだけど…少しホームに甘えている感はないか。広い甲子園は投手に有利。だから、ほんの少しアバウトになってはいないか。100勝…愛しのホームで決めてくれよ、ランディ。=敬称略=

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